吃音に悩む少年を描いた翻訳絵本「ぼくは川のように話す」が刊行
吃音のみならず、人と同じようにものごとが「なめらかに」できないことに悩む子どもたちを「言葉と絵のイメージ」で救う、作者の実体験をもとに書かれた絵本
「偕成社」から、吃音に悩む少年を主人公に描いた翻訳絵本「ぼくは川のように話す」が、7月14日(水)に刊行。
バイデン米大統領や故・田中角栄首相も悩んだ「吃音症」。
幼少期には20人に1人が経験、成人になっても100人に1人がその症状をもつと言われており、そのことが原因でからかいの対象になったり、コミュニケーションに不安を感じたりすることで、多くの子どもたちや大人が今も苦しんでいる。
そんな吃音のみならず、人と同じようにものごとが「なめらかに」できないことに悩む子どもたちを、「言葉と絵のイメージ」で救ってくれるのが、作者の実体験をもとに書かれた絵本「ぼくは川のように話す」だ。
文章を書いたのは、自らも吃音をもつカナダの詩人ジョーダン・スコット氏。
自身の幼いころの体験をもとに書いた初の絵本で、「障害をもつ体験を芸術的な表現としてあらわした児童書」に与えられる、シュナイダー・ファミリーブック賞(米国図書館協会:主催)を受賞している。
絵を描いたシドニー・スミス氏は、寡作ながらも、カナダ総督文学賞、ケイト・グリーナウェイ賞、エズラ・ジャック・キーツ賞と権威ある3つの賞の受賞歴があり、今作を含む4作でニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞している絵本作家。
今作でも、その卓抜な表現力と画面構成により、ジョーダン・スコット氏の詩的な言葉を視覚的なイメージでふくらませ、読者の胸にうったえかける。
また、訳者である原田勝氏は、当初からこの本に惚れ込み、翻訳エージェントに、日本で出版される際は、ぜひとも自分を訳者として提案して欲しいと依頼。今回「偕成社」では初の訳書を刊行することとなった。
主人公は、吃音に悩む男の子。
松の木の「ま」は、口のなかで根をはやして、ぼくの舌にからみつく。
カラスの「カ」は、のどのおくにひっかかってでてこない。
ある症状のひどい日、憂鬱な気持ちで迎えた放課後。
父親が「うまくしゃべれない日もあるさ。どこかしずかなところへいこう」と少年を川へ誘い出します。
黙って、彼を川につれていき、こう声をかけたのです。
「ほら、川の水を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ」
見ると、川は……あわだって、なみをうち、うずをまいて、くだけていた。
「おまえは、川のように話してるんだ」
堂々と流れるようにみえる川も、あわだち、なみうち、うずまき、くだけて――そう、どもっている。
その言葉が、少年の心に沈殿していた恥ずかしさや憂鬱な気持ちを、根底から変えていく。
少年の繊細な心の動きと、父親の言葉とともに彼を救ってくれた美しい川の光景を瑞々しいタッチで描いた1冊を、ぜひチェックしてみては。
ぼくは川のように話す
文/ジョーダン・スコット
絵/シドニー・スミス
訳/原田勝
偕成社刊 1,760円(税込)
問い合わせ先/偕成社