小児科への受診控えが招くリスク。受診時の感染対策や病院選び

小児科への受診控えが招くリスク。受診時の感染対策や病院選び

2021.01.12

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保科しほ

保科しほ

医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック

日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、感染を恐れて現在増加している小児科への受診控え。適切で安全に受診をするために、保護者はどのような知識を持っておくとよいのでしょうか。今回は、受診控えが招くリスクや、実際に病院に行く際の感染対策、病院選びについて解説します。

小児科の受診控えの動向とリスク

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、医療機関の病床数が足りずひっ迫した状況にある一方、医療機関の受診を控える方も増加しています。

受診をする際にも、自分の子どもの症状が悪化しないか不安を抱えたり、受診のタイミングがつかめないことに悩む方も多いかもしれません。

過度な自粛による小児科への受診控えは、子どもの健康リスクにどう影響するのでしょうか。


医療費からみる受診控えの動向

厚生労働省の「医療保険制度における新型コロナウイルス感染症の影響について」の調査によると、令和2年4⽉から8⽉の医療費の動向が減少傾向にあることがわかります。

診療科別にみると、小児科や耳鼻咽喉科の診療費の減少幅が大きくなっています。未就学児の医療費も減少していることから、小さい子どもたちの受診控えが懸念されます。

受診控えの理由として、院内感染の不安が挙げられますが、必要以上に感染を恐れて受診を控えることは、医療機関の存続を困難にするだけでなく、子どもの健康に大きな影響を与える危険もあるため注意が必要です。

出典:第138回社会保障審議会医療保険部会 資料/厚生労働省


過剰な受診控えは病状の悪化につながる

子どもの体調が悪いにも関わらず受診を控えると、病状が悪化したり、病気の可能性を見落としてしまう可能性があるため、自己判断で受診を控えるのは大変危険です。

たとえば、発熱や咳、腹痛などの最初は軽い症状でも時間とともに容態変化するため、急変する可能性があります。

iStock.com/chee gin tan
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新型コロナウイルス感染が考えられるときは、厚生労働省のガイドラインに沿って対応する必要がありますが、そうでない場合は熱以外の子どもの全身症状について確認して受診するべきか判断しましょう。

子どもの急な体調不良に戸惑うこともあるかもしれませんが、子どもの健康と成長を守るのは、保護者の正しい判断。落ち着いて行動することが何よりも大切です。

受診するべきか判断を迷う場合は、救急受診の目安を確認したり、あるいは医療機関や相談窓口に電話で相談することで適切な指示を得ることも可能です。

子どもの急な発熱で救急を受診する目安とポイント

子どもの急な発熱で救急を受診する目安とポイント

受診の際は、熱や嘔吐の有無や、食事や水分がとれているかどうかという子どもの症状に加え、子どもの様子がいつもと違う場合は詳しく説明できるように記録をとっておくとよいでしょう。

iStock.com/KEN226
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また、子どもの症状は変化しやすく、受診をした場合でもタイミングによっては正しい診断に至らないケースもあります。受診後も症状がよくならない場合は再度受診を検討しましょう。

予防接種や定期健診控えにも注意

受診控えは、子どもが体調を崩したとき以外にも、予防接種や定期健診といった場面でも起こっています。これらの機会を自粛する場合、2つのリスクに注意が必要です。


予防接種による病気の予防ができない

まず1つ目は、子どもの予防接種です。予防接種には、集団接種と個別接種があり、それぞれのワクチンと月齢によってスケジュールが組まれています。

コロナウイルスへの感染を恐れるあまり、予防接種を受けない場合は、ワクチンによる病気の予防ができません。そのため、本来なら防げるべき感染症から子どもを守ることができないというリスクが生じます。

予防接種は接種時期や間隔が決まっているため、後回しにすると時期が過ぎてしまうことや、自費で受けなければならなくなってしまうことも。

iStock.com/Prostock-Studio
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予防接種のなかには、破傷風や百日せき、ポリオ、ジフテリア、麻しん、風しん、インフルエンザ桿菌B型(ヒブ)感染症、肺炎球菌、結核、ロタウイルスといった乳児期にかかると重症化する病気を防ぐワクチンもあります。これらは、接種によって十分に防ぐことができるため、子どもの健康を守るためにも予防接種はできるだけ受けるようにしましょう。


医師に相談する機会の減少

もう1つのリスクは、定期健診の機会の減少です。6カ月健診や、1歳健診、2歳健診など、各自治体によって運営される乳幼児健診は、身体の成長だけでなく、直接医師や歯科医師、保健師、助産師などに相談できる貴重な機会です。

しかし、定期健診や発達健診の自粛によって子どものさまざまな発達状態が確認できなければ、子どもの成長に大きな影響が出てしまう可能性も少なくありません。

低身長や貧血といった不十分な栄養状態への指導ができないというリスクの他にも、運動発達や言葉の遅れなどの発見が遅れることで、適切な療育の開始が遅れてしまうという危険もあります。

iStock.com/kuppa_rock
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また、育児健診は子どもの健康状態の定期的な確認や、育児の悩みへの相談なども行える大切な機会。流行状況などから実施方法を変更している自治体もあるため、情報を事前に確認したうえで受けるようにしましょう。

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小児科受診時の感染対策や病院選び

現在、厚生労働省では、医療機関に感染防止対策の徹底を呼びかけており、それを受けて各病院では院内感染防止のガイドライン等に基づいた感染対策を厳重に行っています。

予約システムなどがある小児科を探し、待合室での滞在時間を減らすというのも受診時の感染対策のポイントです。

ほかにも、発熱や咳などの症状がある子どもの診察室と、予防接種や健診を行う部屋や入口を分けたり、時間帯を分けたりしている病院もあるため、各病院のホームページ等で事前に確認しておくとよいでしょう。

また、厚生労働省では、電話やオンライン診療の強化も図っています。比較的軽い症状であれば、都道府県別に公開されている対応病院リストを見て、最寄りの病院を受診するのもひとつの方法です。

出典:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について/厚生労働省

子どもの健康を守るために適切な受診を

iStock.com/recep-bg
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新型コロナウイルスを恐れるあまり、小児科の受診や、予防接種、定期健診を受けることに不安を感じることもあるかもしれません。

ですが、これらの機会を控えることは、適切な治療ができないだけでなく、将来的なリスクも高まるため注意が必要です。

また、子どもの健康を守るためには、受診控えをしないと同時に、かかりつけの小児科を持つこともとても重要です。子どもの普段の健康状態やバックグラウンドを知っている小児科医であれば、病気を早期発見できるだけでなく、保護者も安心して相談することができます。

家や預け先から距離的に近く、診療時間帯にかかりやすいこと、どんなことも遠慮せずに相談できるなど、安心して自分の子どもを診てもらえるかかりつけの小児科を探しておきましょう。

出典:上手な医療のかかり方/厚生労働省


監修:保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)

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保科しほ

日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

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