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アウトドアは失敗体験を親子でする良い機会【栗原心平×瀧靖之②】
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アウトドアでのキャンプ料理は風土や気候など変化する自然の中で行うため、失敗がつきものです。「どんなに出来が悪くても野外で食べると美味しく感じる」といいますが、できれば見栄えよく作って、美味しく食べたいもの。KIDSNA Academy 第二回は、料理家の栗原心平さんに人気のスキレットを使ったレシピを教えていただきました。また、アウトドア体験と脳の発育との関係について瀧 靖之教授を交えた対談をご紹介します。
非日常と未体験を経験できる機会
加藤
瀧 教授
そもそも「アウトドア」とは、屋外で行う活動の総称で市街地を離れた自然空間で行うことなので、様々な組み合わせが可能です。
例えば、同じ場所でも季節や時間、天気などが違えば目にする光景はもちろん生息する植物や昆虫なども異なり、無限の組み合わせを体験することができます。
また、脳科学の観点で「知的好奇心をいかに育むか」ですが、図鑑で見てから本物の昆虫を見ることで知識が積み重なっていきます。
本で見た知識と実際に見た知識の組み合わせで、私たちはもっと知りたいという「知的好奇心」が生まれます。そういう意味でも、アウトドアでの活動は知的好奇心を育む最高のツールです。
そして、学業成績を伸ばすためにこの知的好奇心が重要であるともいわれています。
知的好奇心が高いと専門的な知識を獲得する、いわば「もっと勉強したくなる」ことがわかっています。
加藤
確かにアウトドアでは新たな発見だけでなく、予想外のことが起こる楽しさがあり、大人も子どももワクワクします。
心平さんは、アウトドアでも料理をされると思いますが、家の中で行う料理とはどんな点が違いますか。
栗原 心平さん
基本、イレギュラーの連続だと思います。火を使うことひとつをとっても、火のおこし方から焚火で肉をあぶらせたりすることもその日の天候や環境によって違います。
また最近では、ガスバーナーを持っていくことが多くなっていると思いますが、成り立ちや違いを体験させることができるのがアウトドアのいいところですよね。
加藤
今の子どもたちは火を知る機会がないと思います。
以前であれば家で焚火もできたと思いますが、いまはなかなかできません。
また、ガスコンロがIHに変わっているので火に直接触れることがないので、火そのものが危ないことを感じることができないと思います。
栗原 心平さん
火の存在があることで「過熱できる」のですが、なんで温かくなるのかがわからない子どもも実際にはいるかもしれませんね。
加藤
普段の生活では知りえないことやイレギュラーなところでの料理体験ができるのもアウトドアのいいところですね。
困難を乗り越えてやり抜く力を育む訓練
瀧 教授
人生は、多かれ少なかれ困難を乗り越えていく「レジリエンス」とやり抜く力といわれる「グリット」が大事だと思っています。これらを育むためにもアウトドアでの経験は非常に重要だと思います。
非日常を経験することで「前回、こういうことがあったからこうすればいいのだ」とわかることは大事なことだと思います。
栗原 心平さん
それは大人もそうですよね。
瀧 教授
基本、子どもは親の背中を見て大人を模倣して育っていくと言われています。
そういう意味でも親子でアウトドアに出かけ、親は慣れていないことも一生懸命やっている姿を見せることにも意味があると思うんです。
加藤
今はVUCA(ブーカ)*の時代と呼ばれるように予測不可能なことが多いことを考えると、料理やアウトドア活動が鍛える訓練になるんですね。
瀧 教授
私たちは未来を予測することが難しいので、いかに過去から学ぶかが重要です。その経験がアウトドアではできます。
栗原 心平さん
危険察知の意味でもいいと思うんです。ナイフも今、触れる機会がないですよね。
瀧 教授
私たちが子どもの頃はカッターで鉛筆を削っていたと思いますが、今の子どもはナイフも使わせないですものね。
栗原 心平さん
そういう意味でもアウトドアの場では、防具用の手袋をすることで、鋭い専用ナイフを使って木を削ることができます。自分で削ってみることで「危ない」ことの理解ができます。
瀧 教授
子どもは、小さな失敗を繰り返すことで大きな失敗をしないことを学びます。
高いところから落ちて痛いことがわかれば、大きな事故になるような高いところから落ちるようなことはしません。
そういう経験を子どもたちにさせてあげることができるアウトドアは最高です。
栗原 心平さん
小さなミスが大事ですね。
瀧 教授
しかも、野外なので虫に刺されるし、小さなケガもします。
栗原 心平さん
働かないとその日の家ができないということもあります。(笑)
子どもも手伝わざるを得ません。楽しいことの前にはテントの設営などやらなければならないことがあり、後片付けもしないといけません。
それでも「行きたい」と思うのは、大変なことより楽しいことがあるからだと思います。
加藤
アウトドアに慣れている人はゼロベースでできると思いますが、最近では、整備されている施設があると思います。そういう場所はいかがですか。
瀧 教授
私の考えですが、まずはセッティングされているところからはじめていいと思います。そこから入って、「なるほど、これは楽しいんだ」ということを見つけることが大切だと思います。
楽器演奏でもなんでも始めるときにはハードルが高いと踏み出せないと思うんです。
体験する、しないで人生の幅が違ってくると思うので、いかにハードルを下げて一歩踏み出すかが重要だと思っています。だから否定することはなく、選択肢のひとつだと思います。
栗原 心平さん
料理も同じです。
いきなりハードルの高いものではなく、簡単なものからでいいと思います。最近では、施設やコテージで丸鶏やシーズニングなどセットになったものを渡されて焼けば食べられるといったパックがそろったところも増えています。
加藤
それならできそうです。まずはできることでいいんですね。
瀧 教授
それなら私も料理ができそうな気がします。(笑)
※VUCA(ブーカ )…Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、不確実性が高く将来の予測が困難な状況であることを示す
失敗は新たな答えを見つける貴重体験
加藤
失敗や変化から学べる様々な機会がアウトドアでの活動にはあると思いますが、脳にはどんな影響がありますか。
瀧 教授
私たちが将来のことを考えるときの脳の領域は、過去について考えるときの領域と結構、重なっていると言われています。
それは私たちが「どういうことで失敗をしたか」「どういうことで成功したか」を把握することでその先の計画ができるからです。
だからこそ、私たちは常に「失敗から学ぶ」のです。もちろん成功から学ぶこともありますが、大事なことは失敗をせずに成功することではありません。
豊かな経験こそが、私たちが生きていく上ですごく大事なんです。
そもそも失敗とは、そこで辞めれば失敗かもしれません。ですが、うまくいかない原因を見つける試行錯誤をして「じゃあこうすればいいんじゃないか」と新たな答えを見つけたり作っていくことにつながります。
つまり、試行錯誤が次のステップにつながります。そういう意味でも失敗できる環境を作ってあげることがとても重要だと思っています。
加藤
確かに今は失敗を経験する機会があんまりないですね。
栗原 心平さん
そうですね。
加藤
割とカタチが作られている中で、子どもたちは遊んだり何かをすることが多いので、常にできることが前提になっている気がします。
瀧 教授
おっしゃるとおりです。水道や電気も通っている中でやるのと野外で行うのとはまったく違います。
料理家と脳科学者 アウトドア活動の楽しみ方
加藤
心平さんも瀧先生もそれぞれどのようなアウトドア活動をされているのか伺ってもいいですか。
栗原 心平さん
僕は2〜3家族で行くことが多いのですが、まず事前に図面が見えるキャンプ場でどんなふうに設営をするかを相談します。子どもたちをどこで遊ばせて雨が降ったら、このテントに暖房をひく…といった設計からはじめます。
また、向かう途中に必ず道の駅や直売所があるところに敢えて行きます。そこでみんなで食べたいものを調達して、行った先で作って料理を食べます。
到着したらみんなで設営します。調理場を最初に作るのですが10人くらい座れるテーブルの真ん中にシングルバーナーがおいてある、座りながら食べられるキッチンです。
加藤
想像しただけでもすごいです。行きたくなってしまいます。瀧先生は、どんなアウトドアをされるのですか。
瀧 教授
心平さんの素晴らしいお話のあとに話すのは気が引けるのですが、私は生き物が大好きなので、息子とひたすら虫を採ったり魚を釣ったりしています。
昆虫も気温や天気や時期などを考えて行かないとほとんど出逢えないんです。
栗原 心平さん
私は釣りもやるようにしていますが釣れたことがないです。先日は、河川のキャンプ場に行って、川に罠を仕掛けたのですが、朝になったら流されていました。(苦笑)
加藤
釣りって難しいんですね。
栗原 心平さん
釣りをちゃんと知っている人が準備をしてすれば釣れるのでしょうが、特に川は専門的なので知識が必要で難しいです。
加藤
アウトドアって自然の川や海などでキャンプもできて釣りもできるんだと思うと経験も色々できますね。
瀧 教授
それに川遊びもできますし、星もよく見えます。
加藤
おふたりの話を伺って、私もすごくアウトドアに出かけたくなりました。何より、設備が整った施設で気兼ねなくはじめることが重要と伺い、初心者の私でも始められる自信がつきました。
心平さんも瀧先生もアウトドアでの活動をよくされると伺ってます。
瀧先生は、以前から「アウトドア体験は親子関係によい活動」とおっしゃっていますが、脳科学の観点からみるとどんな効果があるのでしょうか。