卵アレルギーで苦しむ人をゼロにしたい。アレルギー低減卵の安全性を確認(世界初)~広島大学との共同研究:熱や消化酵素に強いアレルゲン「オボムコイド」を含まない鶏卵の作出~
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学術誌『Food and Chemical Toxicology』2023年5月号に掲載
キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満、以下キユーピー)は、国立大学法人広島大学(学長:越智 光夫、以下広島大学)と共に、2013年からアレルギー低減卵※1の共同研究を進めてきました。
2022年4月からは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による産学連携プログラム「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」※2の「共創分野(本格型)」に採択され、10年間のプロジェクトが始まっています※3。この度、2020年に作出に成功した、主要なアレルゲンである「オボムコイド」を含まない鶏卵の「安全性」を世界で初めて確認し、その研究成果に関する論文が、学術誌『Food and Chemical Toxicology』2023年5月号に掲載されることになりました。
なぜ、オボムコイドを除去する必要があるのか?
食物アレルギーの症状を持つ人の割合は、2歳までが全体の約55%、11歳までが約90%と、小児が多くを占めています。また、原因食物については、第一位の鶏卵※4が約33%を占め、牛乳、木の実類、小麦がこれに続きます。鶏卵のアレルゲンとなる物質は、卵白に含まれるタンパク質(オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチームなど)と言われています。
オボムコイド以外のタンパク質は熱に弱いため、十分に加熱すればアレルゲン性が低下します。しかしながら、オボムコイドは熱にも消化酵素にも強いため、加熱調理や消化酵素を用いた加工を施しても、アレルゲン性が失われることがありません(図1参照:加熱によるタンパク質の変化)。
そこで、オボムコイドを含まない鶏卵を作出できないか、2013年から広島大学と基礎研究を続け、2020年にはラボレベルでの作出に成功しています。
世界初。オボムコイドが除去され、副産物や標的以外への影響がないことを確認
オボムコイドを含まないアレルギー低減卵は、ゲノム編集技術により、鶏の受精卵のオボムコイド遺伝子の働きを狙って止め、その後孵化した鶏が成長し、交配・産卵することで作出されます(図2参照)。ゲノム編集には、広島大学が独自開発した、高活性型のPlatinum TALEN(pTALEN)の技術を用い、鶏のオボムコイド遺伝子の働きを止めることに成功しました。
このようにして作出した鶏卵(アレルギー低減卵)を食品として利用するには、ゲノム編集による副産物や、標的以外へのゲノム編集の影響を解明し、「安全性」を確認する必要があります。そこで、広島大学を中心に研究・解析をした結果、作出したアレルギー低減卵には、オボムコイドも副産物も含まれていないことが証明されました。また、ゲノム編集による、別の遺伝子の挿入や他の遺伝子への影響も全くないことが明らかとなり、世界で初めて、その安全性を確認することができました。
この研究成果に関する論文は、学術誌『Food and Chemical Toxicology※5』2023年5月号に掲載される予定です。