【産婦人科医監修】インフルエンザ、風疹など妊娠中に予防接種は可能?注意すべき感染症の種類

【産婦人科医監修】インフルエンザ、風疹など妊娠中に予防接種は可能?注意すべき感染症の種類

2018.10.25

Profile

杉山太朗

杉山太朗

田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

妊娠中は風邪や感染症などにかからないように健康面に特に意識しますよね。妊娠中にワクチン接種が可能な予防接種と妊娠中特に注意が必要な麻疹・風疹などの感染症について解説します。また、具体的に気をつけるべき感染症にはどのようなものがあるのか、予防接種ができないときの対策法についてもご紹介します。

妊娠中の予防接種

妊娠を望んでいる女性や男性は感染症にかからないように予防接種を受けることが大切です。しかし、予防接種の中には妊娠が分かってからだと接種ができないものもあります。

妊娠中に受けることができる予防接種や特に注意すべき感染症にはどのようなものがあるのか詳しく見ていきましょう。

妊娠中に接種可能な予防接種

予防接種
iStock.com/Ca-ssis

ワクチンには、「不活化ワクチン」と「生ワクチン」があります。麻疹・風疹や流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、水痘(水疱瘡)などの「生ワクチン」は、予防対象となるウイルスをそのまま使うため、お腹のなかの赤ちゃんにウイルスが移行して影響を与える可能性があるので、妊娠中は接種ができません。

妊娠中の予防接種は、インフルエンザやB型肝炎、肺炎球菌などの「不活化ワクチン」のみ接種が可能です。

妊娠したら特に注意する感染症

妊娠を考えている人や、妊娠中の人は以下の感染症にかからないように特に注意が必要です。


インフルエンザ

インフルエンザは、感染した人のせきやくしゃみなどの飛沫感染と、ウイルスがついた場所を手で触って食事をするなどの接触感染でうつります。

インフルエンザは不活化ワクチンで、妊娠中にも安心して接種ができます。万が一インフルエンザにかかっても、予防接種を受けておくと重症化を防ぐこともできます。


麻疹・風疹

せきやくしゃみなどの飛沫感染でうつります。予防接種で感染対策ができますが、妊娠中には接種ができないので、妊娠を望んでいる男性や女性は事前に抗体があるかを検査して、抗体がなければ予防接種を受けましょう。

妊娠初期に風疹にかかるとお腹の赤ちゃんに感染し、赤ちゃんに難聴や白内障、心臓などの障害が生じて、先天性の異常を及ぼすことがあります。「先天性風疹症候群」といわれています。


トキソプラズマ感染

トキソプラズマは、原虫の名前です。感染した猫の糞や生肉、土の中などの含まれる生虫によって感染します。日常生活だと、ペットとの接触や生肉の摂取、ガーデニングなどの土いじりなどで感染する可能性があります。

通常は感染しても全く問題はありませんが、妊娠中に初めて感染するとお腹のなかの赤ちゃんに感染し、流産や脳、眼に障害が生じることがあります。なかには、感染しても症状がでない場合もあったり、出産時には問題がなくても成長するなかで症状が出たり、症状の度合いもさまざまです。

トキソプラズマ感染の予防接種はないため、妊娠中に生肉は食べずに、よく加熱したり、ガーデニングを行うときには、手袋をつけるなどの対策が必要です。


サイトメガロウイルス

サイトメガロウイルスは、日常のいろいろなところで溢れていますが、特に唾液や尿が感染の原因になることが多いようです。感染すると、難聴や小頭症、流産などの影響が出る可能性があります。

成人している日本人の半数以上はすでに感染して免疫を持っているといわれて、大人でも子どもでも通常、感染しても問題ありませんが、妊娠中に初めて感染したり、妊婦さんの免疫力が著しく低下するとお腹の赤ちゃんへ感染する可能性があります。

きょうだいの唾液や尿と接触してうつることが多いので、接触したときにはよく手を洗うことや子どもの残した食べ物を食べたり、食器の共有は避けましょう。


梅毒

梅毒は、性的接触で感染する病気で、妊娠中に母子保健法で検査を行うことが定められた感染症です。

感染してから経過した期間によって症状が出る場所や症状に違いがでます。妊娠中に感染し、感染が赤ちゃんに広がると、早産や奇形が生じる場合があり、「先天性梅毒」ともいわれています。

予防接種はありませんが、治療と処方薬を使うと治る病気です。傷ついた部位と、皮膚や粘膜が接触しないように注意しましょう。

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予防接種できない場合の予防法

予防接種のない感染症は予防対策をとることが大事です。感染症の予防法をご紹介します。


手洗い・うがいの徹底

トイレに行った後や外出から帰ってきたとき、調理や食事の前は石鹸を使ってしっかり手を洗いましょう。ウイルスを体内に入れないことが重要です。


外出時は必ずマスクの着用

妊娠中は人混みへの外出はなるべく控え、病院などで外出するときには、マスクの着用が効果的です。


食品の十分な加熱

調理中のお肉
iStock.com/AlessandraRC

生肉や加熱していないチーズなどには感染症の原因となる微生物が含まれていることがあります。妊娠中は、加熱されていない食品は控え、十分に加熱したものを食べるようにしましょう。


ペットのトイレ掃除に注意

猫のフンにはトキソプラズマの原因となる虫体が含まれているので、妊婦さんはなるべくペットのトイレ掃除はしない方がよいです。もし妊娠中にペットのトイレ掃除をする場合はマスクと手袋を着用し、フンに触れないよう注意が必要です。


家族も予防接種を受ける

特に風疹の予防接種は、予防接種法が改訂になり、学校での集団接種から医療機関での個別接種となったため、近年予防接種を受けていない人が増えました。特に30代、40代の男性で風疹の予防接種を受けていない人が多いです。風疹の予防接種をきちんと受けているかは、母子手帳を確認し、接種していないようであれば早めに接種しましょう。

妊娠を考えている人だけが予防接種をしても、夫や家族から感染する可能性もあるので、予防接種は家族もいっしょに受けることが大切です。

妊娠に気づかず禁止されている予防接種を受けてしまった時の対処法

麻疹・風疹の場合は、ワクチン接種後2ヶ月は妊娠しないように避妊するように伝えられることがほとんどです。

妊娠に気づかずに風疹の予防接種を受け、接種したあとに妊娠が分かった人もいるでしょう。大丈夫か心配になるかもしれませんが、予防接種を受けてから2ヶ月経たずに妊娠した人で先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれた報告はないので、心配な場合は産婦人科医の先生に相談をしましょう。

妊婦さんは予防接種と感染症対策が重要

診察を受ける妊婦さん
iStock.com/Halfpoint

妊娠中に麻しんや風疹、インフルエンザの感染症にかかると、お腹のなかの赤ちゃんに影響を及ぼすことがあります。普段、感染しても全く問題がない感染症でも、妊娠中に感染すると胎児に障害が生じる場合や流産につながる可能性があるため注意が必要です。

インフルエンザなど妊娠中でも予防接種が受けられるものは、なるべく早めに予防接種を受けるようにしましょう。風疹・麻疹などは妊娠中にはワクチン接種ができないため、妊娠を望んでいる女性は事前に受けておくことが重要です。また、感染症は夫から妊婦さんにかかることもあり得るので、男性も予防接種をすることが大切です。特に、風疹は予防接種法の改定で働き盛りの30代から40代の男性は受けていない場合があるので確認をして、予防接種が済んでいない場合は受けてください。

予防接種と合わせて、手洗いやマスクの着用、食品の加熱などの対策で妊娠中の感染症を防ぎましょう。


監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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