「個」の力を伸ばしたければ、多くの「機会」を与えなさい【高濱正伸】

「個」の力を伸ばしたければ、多くの「機会」を与えなさい【高濱正伸】

2022.03.03

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

これまで以上に不確実な時代を生きる子どもたち。長年教育現場に携わり、多くの親子を見続けてきた花まる学習会代表・高濱正伸先生に、親子が直面するさまざまな課題に対し、親としてどう考え、どのように子どもと関わっていくべきか語っていただきます!今回のテーマは「個性の伸ばし方」です。

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高濱先生:

お母さんたちには、「〇〇さんのお子さんがこれをやって伸びたらしいからこれやらせてみよう」と手近な情報に飛びつきがちですが、「個の力を伸ばす」ことはそう簡単ではありません。

長い間多くの親子を見てきて思うのは、親が子どもにできるのは、人との出会いはもちろん、イベントや講演などのさまざまな経験の「機会」を提供すること。

たとえば、現在日本でもっとも注目されているベンチャー企業のひとつであり、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去サービスを提供する、アストロスケールのCEOの岡田光信氏。

岡田氏は、一度は外資系企業に就職したものの、高校時代のある出会いが彼を突き動かし、ゼロベースで起業しました。

その出会いとは、高校時代アメリカ留学中に、母親が偶然に「NASAに短期留学できる」という科学雑誌の企画を発見し、勧めてくれたことです。

彼はアメリカのスペースキャンプでNASAの科学者たちのありようを目の当たりにし大きな衝撃を受けました。

さらに、日本人宇宙飛行士の毛利衛さんから「宇宙はあなたの挑戦を待っています」という手書きのメッセージを受け取ったことに感銘を受け、帰国後、猛勉強を開始し、結果的に宇宙にまつわる事業を立ち上げたのです。

科学者たちに生で会える機会を与えられたことが、結果的に彼を動かす原動力となり、人生に大きな転機をもたらしました

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もうひとつ、私自身、花まる学習会の卒業生たちに、彼らの人生の転機についてインタビューをおこなっています。

その中で、小さい頃からものすごく集中力があり、算数が得意で、最終的に麻布から東大に行った子がいました。

「数理的に伸びるには」というテーマで話を聞くための取材だったのですが、実は小6のときに田代先生という国語のカリスマ的な先生と出会ったことが、彼にとっての転機だったことが分かったのです。

それまで国語が苦手だった彼は、田代先生の授業で「国語もすべて論理的に説明できる」ということに驚き、毎時間国語が楽しみになり、実は中学受験時も国語が最大の得点源だったと言います。

私なりに多くの子どもを見てきて、「この子の才能は数理系だからそっちにいくだろう」と思っていましたが、彼は田代先生との出会いによって、その後、言葉のほうに才能が開花しました。

どちらの事例も、最終的には「こういうところに行かせよう」とか、「こういう体験をさせよう」という親の決意なんですよね。

とくに5、6年生くらいの思春期は、誰と出会うかが非常に重要。それがきっかけとなり、ものすごく才能が開花する場合もあるので、親としてできる限りのチャンスは与えてあげてほしいと思います。

子どもはスーパーマンにすごく影響を受けますからね。大人のほうが経験も豊富だからこそ、子どもが「やらない」「行かない」と言っても「そういわないでやってみようよ」と背中を押して、積極的にそのような機会を与えてほしいです。

ただし、正解を求めすぎると人は動けなくなります。成功した誰かの正解を真似するのではなく、親自身が心が震えたことに触れる機会を幅広く与えるとよいでしょう。

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1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

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