【絵本専門士がおすすめ!】子どもの「食」の世界をグンと広げる、世界の珍しいグルメに出会える絵本5冊

【絵本専門士がおすすめ!】子どもの「食」の世界をグンと広げる、世界の珍しいグルメに出会える絵本5冊

絵本を通して子どもに世界のさまざまな国の文化に触れさせたい ── そんなママパパたちの願いに応えて、絵本専門士の西 小百合さんが各国のおすすめ絵本を紹介する記事の第2弾です! 今回は、「食べることが大好き」という西さんが「世界の珍しいグルメに出会う絵本」を5冊教えてくれました。

絵本専門士とは、絵本についての豊富な「知識」「技術」「感性」を身に着けた、いわば “絵本のスペシャリスト” です。
国立青少年教育振興機構が認定する資格で、これを取得した人は全国各地で読み聞かせやおはなし会、ワークショップなどを開くなど、子どもたちが絵本に親しむ場を広げています。

参考:国立青少年教育振興機構「絵本専門士」

前回の記事「絵本専門士がおすすめ! 子どもの想像力を広げる世界の絵本10冊」では、富山県・射水市大島絵本館で絵本専門士として活動している西 小百合さんに、KIDSNA STYLEの読者と子どもたちにおすすめしたい世界の絵本を幅広くピックアップしてもらいました。
その続編となる今回は、テーマを「世界の珍しいグルメ」に絞って紹介。日本ではあまりなじみのないお料理やフルーツなどがたくさん登場します。

レシピが載っている本もありますので、ぜひ本屋さんで探してみてください。

1冊目 『きょうはふっくら にくまんのひ』

「きょうはふっくらにくまんのひ」表紙
作:メリッサ・イワイ/訳:横山和江/偕成社/1,650円(税込)

【内容】6階建てのアパートに住むリリがおばあちゃんと一緒に肉まんを作ろうとすると、かんじんのキャベツがありません。「6かいの バブシアから キャベツを わけてもらってきてくれる?」頼まれたリリは、犬のキキと一緒にバブシアのところへ。するとそこでも同じようなことを頼まれ……アパートを上に下に駆け回るリリの物語。

西さん このアパートは6階建てで、それぞれの階に出身国がバラバラのおばあちゃんが住んでいます。そしてみんな、小麦粉を練って作った生地の中においしい具材を入れた料理「ダンプリング」を作っています。
キキのおばあちゃん・ナイナイは中国の「にくまん」、6階のバブシアはポーランドの「ピエロギ」、他にもジャマイカの「ビーフパティ」、メキシコの「タマレス」、イタリアの「ラビオリ」、レバノンの「ファティール」……でも、みんな何か材料が足りなくて、それをわけてもらうために主人公のリリと犬のキキがアパートの中をかけめぐるお話です。
そして最後に、みんなができたダンプリングをもって集まります。
そこに、リリのお父さんとお母さんがやってきます。実は赤ちゃんが生まれるので、リリはおばあちゃんのところに預けられていたんですね。

面白いのは、ナイナイやバブシアなどは名前じゃなくて、その国の言葉で「おばあちゃん」という意味なのだそうです。それぞれの部屋の様子や服装も、国ごとの特徴が出ていて素敵です。また、おばあちゃんたちが「たいへん!」という意味の言葉をその国の言葉で話すところも面白いです。

肉まんを中心に話が進みますが、言葉や文化などいろいろな視点で見ることもできます。

おすすめポイント:肉まんの作り方と、5か国語の「たいへん!」を知ることができる。

2冊目 『ライラックどおりのおひるごはん みんなでたべたい せかいのレシピ』

「ライラックどおりのおひるごはん」表紙
作:フェリシタ・サラ/訳:石津ちひろ/BL出版/1,760円(税込)

【内容】お昼になると、いいにおいが漂うライラックどおり。さまざまな国出身の住人が、おいしい料理を作っています。イタリアのトマト・スパゲッティ、南インドの赤レンズ豆のカレー、フランスのミニ・キッシュ……できたらみんなで一緒にいただきます! 左ページにはキッチンで料理する絵が、右ページにはその材料のイラストとレシピが載っていて、読むだけではなく、作る楽しみもある1冊。

西さん これも1冊目と流れは似ていますが、もう少しワールドワイドになっています。ライラック通り10番地のマンションには、13か国の人が住んでいて、それぞれが母国の料理を作り、庭に持ち寄ってお昼ごはんを食べます。
すごく豪華なランチですよね。日本だと、お昼ごはんに時間や手間をかけないことも多いですが、みんなでゆっくりランチを楽しむという意識、食を楽しむ様子が表現されていて面白いです。また、描かれている住人たちの部屋の家具やしつらえなどから、お国柄やその人の人生に思いを馳せることができる魅力的な1冊でもあります。

例えば、ミニチュアの帆船が飾られた部屋で白身魚のムニエルを作るムッシュー・ラマールはフランス人の漁師さん。ムニエルの材料に松の実が入っているのが新鮮です。
また、日本人のイシダさんは、玉ねぎのかわりにエシャロットを使って親子丼を作ります。
ほかにもスペインのサルモレホ(トマトの冷製スープ)、メキシコのワカモレ(アボカドのディップ)、ギリシャのスパナコリゾ(ホレンソウのリゾット) ── こんなふうに、人の数だけ料理があると思うと楽しくなりますよね。

おすすめポイント:さまざまな国の食文化にあわせて、衣・住の文化も目で楽しめる

3冊目 『たべてみて!フリーダ・キャプランがひろげた食のせかい』

「たべてみて!」表紙
文:マーラ・ロックリフ/絵:ジゼル・ポター/訳:福本由紀子/BL出版/1,980円(税込)

【内容】キウイフルーツや種なしスイカ、スナップエンドウにハバネロ、スターフルーツなどなど……今はおなじみになった果物や野菜を最初に広く販売したのは、フリーダ・キャプランというひとりの女性でした。アメリカ・ロサンジェルスの青果市場から、世界中の食卓を豊かにしてくれた彼女のチャレンジに満ちた物語。

西さん いま当たり前に食べているものを、「いちばん最初にこれを食べたのは誰だったんだろう」と考えることがありませんか? この絵本は、珍しい果物や野菜を見つけて販売する、という道なき道を果敢に切り開いた女性のお話です。読むと食べものをより身近に感じられるようになりそうです。

最初フリーダは、青果市場で簿記係の仕事をしていたのですが、その後販売の仕事を始めます。販売担当としての彼女はかなり優秀で、例えば、売れなかったマッシュルームをレストランで頻繁に注文したり、お店で必ずカートに入れたりして人気商品に押し上げました。その手腕から「マッシュルームの女王」と呼ばれたそうです。

それ以来、変わった果物や野菜があると、業者の人たちが「あの人なら売ってくれるかも」とスナップエンドウ、種なしスイカ、生ライチなどを持ってくるようになりました。中でもいちばん有名なのは、キウイフルーツ。「チャイニーズグーズベリー」と呼ばれていたのを、ニュージーランド産で鳥のキウイみたいだということで名前を付けて、タルトやジャムといった食べ方も紹介し、世界中に広まるきっかけを作りました。

面白いのは、フリーダが食べたときに肘に何か不思議な感じがあると、その果物や野菜が売れるというのです。お子さんたちにも、「ビビッとこない?」というような興味のひき方をしても楽しいのではないでしょうか。

おすすめポイント:定番ではない珍しい食べものにも、興味を持つきっかけをくれる


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4冊目 『300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート』

「300年まえからつたわるとびきりおいしいデザート」表紙
文:エミリー・ジェンキンス/絵:ソフィー・ブラッコール/訳:横山和江/あすなろ書房/1,980円(税込)

【内容】つぶしたブラックベリーをクリームと和えて冷やしたイギリスのデザート、ブラックベリーフール。それをつくる様子を、300年前、200年前、100年前、そして現代という4つの時代それぞれに描いた絵本。材料の入手方法、調理器具、家族の関係などが変化する様子も興味深く描かれています。

西さん この絵本では、ひとつのデザートを作る過程を通して、各時代の社会的な背景も描かれています。巻末にはレシピや作者のメッセージだけではなく、奴隷の話や泡だて器の時代考証を厳密に調べた内容などが書かれているので、読んだあとにそれらについてお子さんと話し合ってみてもいいですね。

ブラックベリーフールというのは、ブラックベリーをつぶしたものとクリームを和えて冷やしたイギリスのデザートなのですが、この本ではまず300年前に作っている様子から始まります。
母と娘がスカートを木のトゲに引っかからせながら、ブラックベリーを摘みます。牛からお乳を搾って、小枝を束ねたもので15分泡立ててクリームをつくります。ブラックベリーを洗うための水は井戸から汲んできて、つぶしたブラックベリーとクリームを木のスプーンで混ぜ合わせます。
できあがったものをお父さんとお兄さんに配ったら、お母さんが女の子に、「スプーンをなめてもいいわよ」といって、女の子はよろこんでなめる ── この流れが時代を超えて繰り返し続く本なんです。

200年くらい前には、奴隷の母子が農園でブラックベリーを摘み、生クリームは牧場から荷車で運ばれてきて、ブリキの泡だて器でホイップする。
100年前になると、ブラックベリーは買ってきます。配達された生クリームを、鉄の泡だて器のハンドルをくるくる回せば5分でクリームができます。水は井戸ではなく水道からくみます。
現代になると、はじめてお父さんと息子が作ります。スーパーマーケットでブラックベリーと低温殺菌された生クリームを買い、インターネットで作り方を調べます。電動泡だて器であっという間にホイップクリームができました。
火を使わない簡単なレシピなので、お子さんと作ってみるのも楽しそうです。

おすすめポイント:おいしそうなデザートの作り方と同時に、時代ごとの社会の変化を知ることもできる

5冊目 『おいしいかずあそび』

「おいしいかずあそび」表紙
作:ソフィー・ペルハム、スーザン・ルーベン/訳:おがわ やすこ/大日本絵画/1,870円(税込)

【内容】最初のページにはイチゴが1個。次のページではその上にチョコチップアイスが2つのっかって……ページをめくるごとに具材が1つずつ増えていって、おいしそうなパフェができあがっていくしかけ絵本。数をおぼえるのはもちろん、自分の手で絵が変わる楽しさも知ることができる1冊です。

西さん ここまでの4冊は、読みごたえのあるものが多かったので、最後の1冊は小さいお子さんも単純に楽しめるしかけ絵本を選びました。描かれているメニューは日本でも珍しくないパフェなのですが、私のお気に入りの1冊です。
最初はおいしいイチゴが1個。ページをめくると、チョコチップアイスが2つのります。次はキウイが3個、バナナが4切れ……仕上げはたくさんのスプリンクルで、フルーツパフェが完成します。
ここで終わりなら一般的なかずあそびの本ですが、私の好きなところはここからです。

仕上がったパフェをまず上から、スプリンクルとさくらんぼをパクパク……。完成で終わりじゃなく、またそれを食べつくす。読み聞かせすると、この部分で子どもはもれなく一緒にパクパク食べようとします(笑)。
手を出してイチゴをつまもうとしたり、どの段を食べたいか言い合ったり、最後はみんなで声を合わせて「ごちそうさまでした!」といってニッコリ終わります。
しかけ絵本としては頑丈にできていて、小さいお子さんが多少手荒に触っても壊れるような心配がないのも、さらに好きなところです。

おすすめポイント:パフェを自分でつくって食べる様子を疑似体験して楽しめる

未知の食に出会うよろこび、みんなで食べる楽しさを知ってほしい

今回は、世界の珍しい食に出会える本を中心に、5冊紹介しました。
最後に絵本専門士・西さんから、これらの絵本を選んだ想いをうかがいました。

「今回ご紹介した絵本のうち、最初の2冊は『おいしいものみんなで笑いながら食べられるのっていいな』と思えるものです。
最近は『個食・孤食』が増えていて、なかなかそういう状況は作りにくい世の中になっていますが、ひとりで食べていると、嫌いなものがよけいに増えそうな気がして……。
それよりもみんなで食べたり、未知の食べものにも果敢に挑戦したりしてみたいな、という気持ちで選びました。

子どもはもちろん、私たち大人も苦手な食材やまだ食べたことのないものがあるはず。これらの絵本を親子で見て、お互いに自分の食を見直したり、意識を広げたりできたらいいなと思います。

それと、料理というとどうしても『お母さん・おばあちゃん』がするものと思われがちですが、『300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート』ではお父さんも作っていますし、『ライラックどおりのおひるごはん』では老若男女入り乱れています。
『料理をするのはお母さんだけじゃない』ということを、子どものうちから当たり前に思えるようになるといいですね」

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