安定期といわれる妊娠中期が終わった妊娠8ヶ月の妊娠30週目は、ホルモンの影響を受けやすく情緒不安定になったり、トラブルも感じやすいかもしれません。妊娠30週の妊婦さんの体調や、赤ちゃんの様子を医学博士で産婦人科医、田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生監修のもと解説します。
妊娠8ヶ月、妊娠30週目の妊婦さんについて詳しく見ていきましょう。
妊娠後期に入っても経腟エコー検査を複数回行うことが奨励されています。この妊娠30週目あたりに行われることが多いでしょう。
妊娠後期の経腟エコー検査では、胎児とママをつなぐ胎盤の位置を観察する検査が行われます。また、お腹の張りや出血など早産を疑う症状がある場合に、経腟エコーを使って子宮頸管の長さを測定します。
経腟エコーは、内診台にあがるので、パンツやショーツ、レギンスなどを脱いで検査をします。ワンピースにレギンスや、ゆったりしたロングスカートなどの格好だと露出を最小限に抑えられるでしょう。
この時期の健診は経腟エコーと経腹エコーの両方を行うことが多いので、ボトムのインナーが脱ぎ着しやすく、お腹を出しやすいトップスを選ぶとよいですよ。
妊娠8ヶ月の妊娠30週になると、お腹のなかの赤ちゃんがぐんと大きくなり、妊婦さんのお腹の皮膚が急激に伸びるので妊娠線ができやすくなります。
最も皮膚が伸びるお腹を中心に、妊娠することで胸や太ももなど脂肪がつく場所は妊娠線ができやすいです。妊娠線は1度できると消えにくいので、妊娠線専用のクリームやオイルでお風呂上りや乾燥を感じるときに、こまめにケアをすることが大事です。
妊娠30週は、女性ホルモン「プロゲステロン」の分泌が最も増えることや、子宮が大きくなって膀胱を圧迫するため、くしゃみや咳をした拍子に尿漏れを起こすことがあります。
こまめにトイレに行ったり、妊婦さん用の尿漏れパッドを活用して尿漏れ対策をしましょう。妊娠中は、骨盤付近の筋肉が緩んでいるので、骨盤周りの筋肉を鍛える体操を行うのもよいかもしれませんね。
里帰り出産を考えている場合は、妊娠30週くらいで帰省するのがおすすめです。赤ちゃんは予定日に必ず生まれるわけではないので、産院とのコミュニケーションをとって安心して出産するためにこのくらいの時期に里帰りができるとよいですね。
電車、車など長時間かけて移動する人は、お腹が大きくなればなるほどきつくなります。飛行機は、気圧の変化などから体調が変わりやすいので、予定日が近づいている妊婦さんが乗る場合には規定があります。エコノミー症候群にも注意が必要です。
しかし、仕事などでギリギリまで帰省できない妊婦さんもいるでしょう。その場合は、飛行機や電車の広めの席を前もって予約しておく、なるべく楽な格好で移動できるようにクッションの持ち込みや服装など、事前準備をしっかりすることが大事です。それでも妊娠35週までには移動をできるように今から準備をしておきましょう。
妊娠8カ月の妊娠30週目に入ると、赤ちゃんが生まれたあとの生活を現実味をもって考え始める人も増えるでしょう。ベビーベッドの位置や赤ちゃんが過ごす部屋作りをしたり、ベビー用品を揃えるのも楽しい時間になりそうですね。
今まで逆子かもしれないといわれていた人も妊娠30週には、赤ちゃんの体位が元に戻ることが多いです。この時期に健診で逆子といわれたら、赤ちゃんがこれからもっと成長すると子宮のなかのスペースが狭くなり、自然に赤ちゃんが正常な位置に戻るのは難しくなるかもしれません。積極的に逆子体操を取り入れてみましょう。
脂肪が増えて、下半身や脇の下に汗がたまりやすく、かゆみや汗疹ができる場合があります。一時的なかゆみであれば問題はありませんが、妊娠性皮膚搔痒のような症状が出たら病院できちんと診てもらいましょう。
妊娠中は、汗をかきやすいのでなるべく通気性のよい洋服を着たり、汗をかいたらこまめにタオルでふくなど皮膚を清潔に保つ工夫が必要です。
お腹のなかの赤ちゃんのために意識して栄養を取ろうとする妊婦さんもいるかもしれません。しかし、体重が急激に増えると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を引き起こしたり、出産や産後のママの身体に影響が出ることがあります。
外食はなるべく避け、肉やお菓子など脂肪や糖分の多いものは量を意識して、栄養バランスを考えた食事を心がけましょう。
妊娠8ヶ月になると、お腹がどんどん大きくなるので、運動量が減ってしまう人が多いでしょう。運動量が減ると、体重増加や妊娠糖尿病、妊娠高血圧症につながるかもしれません。ウォーキングや簡単な体操など適度に身体を動かすことは、運動不足の解消だけでなく、ママの気分もリフレッシュにもなります。買い物や犬の散歩など何か目的を持てるとよいですね。
妊娠中は、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、運動する機会が減り、筋肉量が落ちることなどで身体が普段より冷えやすくなっています。身体が冷えると、血液循環が滞ったり、むくみや尿漏れも起こりやすくなるなどのマイナートラブルも増えるでしょう。
室内でも靴下を履いたり、なるべく身体を覆う服装を心がけるなどして身体を冷やさない工夫が大切です。
妊娠30週目は、お腹がますます大きくなり、ホルモンの分泌量もピークを迎えることで、むくみや尿漏れなどのマイナートラブルを感じやすくなる時期でしょう。胎動が前ほど感じられなくなるかもしれませんが、それは赤ちゃんが順調に大きくなっている証拠です。お腹のなかの赤ちゃんは、内臓機能や五感も育ってきています。
逆子や皮膚トラブルなど心配なことも増えるかもしれませんが、逆子体操や通気性の洋服を着るなどの対策を取り入れましょう。
もうすぐ赤ちゃんに会える喜びを感じながら、お腹のなかの赤ちゃんにたくさん語りかけてみてください。赤ちゃんの部屋作りや家中の家具のレイアウトを赤ちゃんとの生活のために変えるのも楽しいでしょう。赤ちゃんが生まれてからの生活をより実感できるかもしれませんよ。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。
患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
2019年08月02日
不妊治療の結末は誰にも予想ができず、努力をしたからといって必ずしも望んでいた結果が得られるわけではない。「だからこそ、ゴールをどこに置くのかが重要」と産婦人科医の高尾美穂先生は話す。パートナーと同じゴールに向かって協力することが必要不可欠だが、不妊治療のゴールとはどのように設定するのがよいのだろうか
高尾美穂
世界で初めて体外受精による赤ちゃんが誕生したのが1978年。日本においても不妊治療を受ける方が増え、体外受精による出生児数も増えている。一方で「不妊治療を始める前に知っていただきたいことがある」と話すのは産婦人科医の高尾美穂先生。多忙な現代を生きるわたしたちは妊娠そのものをどう考えたらよいのだろうか
高尾美穂
妊娠37週から41週のママに起こる前駆陣痛。本陣痛の前に来る不規則な陣痛を指しますが、出産を控えて落ち着かない中で「この異変はもしかして本陣痛?」と勘違いしてしまうことも珍しくありません。この記事では、前駆陣痛の特徴や症状、その他の痛みとの違い、対処法や注意点、体験談をご紹介します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
「子どもがほしい」そう考える夫婦が妊娠・出産を目指して取り組む「妊活」。晩婚化が進む日本では、比例して妊娠・出産を希望する年齢も高くなり、「不妊治療」を受ける方も年々増加傾向にあります。そんな妊活や不妊治療を検討する際に役立つ、基礎知識から不妊治療の課題、海外の事例などを紹介した記事をまとめました。
読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は丸の内の森レディースクリニック院長の宋美玄先生が、「3年後に自然妊娠したい」というお悩みに答えます。
宋美玄(ソンミヒョン)
妊娠兆候のひとつである「インプランテーションディップ」。妊娠を希望する方や、妊活を経験された方は、一度は聞いたことがあるかもしれません。いつ頃に見られる現象なのか、見られなくても妊娠している可能性はあるのか。また基礎体温との関係や、妊娠検査薬はいつから使えるのか、など気になるポイントを解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
ふたごやみつごが生まれる割合は、約50年前と比較すると倍増していることを知っていますか?これには、不妊治療が関係しているようです。多胎妊娠のしくみや、母体と胎児それぞれのリスクや、備えておくことなどを田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生に聞きました。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
人によって治療期間や心理面、体調面の負担が大きく異なる不妊治療。周囲の人に相談できない、パートナーと足並みをそろえて取り組めないなどといった悩みをひとりで抱える人も多くいます。日本ではあまり普及していない「カウンセリング」を、不妊治療の場でも上手く活用するためには?生殖心理カウンセラーの平山史朗さんに話をうかがいました。
平山史朗
治療ステップによっては高額な医療費がかかる不妊治療。現在日本では人工授精以降の治療ステップは自己負担だが、2022年春をめどに保険適用の範囲を拡大する動きがある。実現すれば、経済的な理由で不妊治療をあきらめていた方たちにとって一つの転機になるが、海外では不妊治療の多くをすでに保険適用としている国も少なくない。いくつかの国を挙げ、不妊治療の経済的支援の事例をみていく。
ライフスタイルやキャリアの多様化に伴い、未婚、晩婚、晩産化が進んでいる。不妊治療を視野に入れたときに、費用や仕事との両立はどうなるのか。「不妊治療を始めようと決めたものの、お金のことや、どんな治療やサイクルで進めるのかイメージが沸かない」という方へ向けて、データと体験談で解説していく。
ライフスタイルやキャリアの多様化に伴い、未婚、晩婚、晩産化が進んでいる。不妊治療を視野に入れたときに、費用や仕事との両立はどうなるのか。「不妊治療を始めようと決めたものの、お金のことや、どんな治療やサイクルで進めるのかイメージが沸かない」という方へ向けて、データと体験談で解説していく。
ウイルスによって引き起こされる風疹は、免疫が十分にない人に対して強い感染力を持っています。妊娠時期に風疹にかかった場合、どのような影響があるか気になる人もいるのではないでしょうか。今回は、妊娠中に風疹にかかった場合の影響、風疹の予防接種後に妊娠がわかったときの対応、妊娠中の風疹の感染対策などについて解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)