【小児科医監修】保育園、幼稚園で毎年流行るノロウイルス。2018年の動向や予防ワクチン

【小児科医監修】保育園、幼稚園で毎年流行るノロウイルス。2018年の動向や予防ワクチン

保育園や幼稚園でも流行るノロウイルス感染症。毎年、感染のお知らせが出る園もあるのではないでしょうか。ノロウイルスの流行時期はいつからいつまでか、感染経路や原因、登園基準についてクローバーこどもクリニック院長、眞々田容子先生の監修のもと、ご紹介します。また、ワクチンで予防ができるのかも解説します。

ノロウイルスは2018年も流行る?

感染性胃腸炎の原因ウイルスの代表格ともいえる、ノロウイルスの流行時期はいつからいつまでか、感染経路を解説します。


流行時期

ノロウイルスは、例年11月頃から流行り出し、12~2月に最も流行ります。冬場に特に流行する傾向がありますが、いつまで流行すると断言できるような感染症ではなく1年間を通して発生します。


感染経路

ノロウイルスは人の小腸の粘膜で増殖するウイルスです。ノロウイルスに汚染された水や、食品が感染の原因となります。牡蠣やアサリ、ハマグリ、ホタテなどの二枚貝から感染の報告がされています。

ノロウイルスの感染経路は、ノロウイルスに汚染された貝などを十分に加熱せずに食べたり、ノロウイルスのついた手指が口や鼻に触れたり、ノロウイルスに汚染された食材を食べる「経口感染」で感染します。

ほかにも、ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や便に触れるなどの「接触感染」で感染します。

ノロウイルス感染症の症状

ノロウイルスに感染すると、どのような症状があらわれるのでしょうか。


下痢

ノロウイルス感染症では、水っぽい下痢になります。症状が重症化すると、一日のうちに頻繁に下痢がでることもあります。また、下痢は4~5日くらい続き、ほかの症状と比べると長引く傾向があります。


吐き気、嘔吐

女の子 嘔気
iStock.com/RyanKing999

ノロウイルスに感染すると2日程度の潜伏期間を経て、強い嘔吐をもたらし、水分を多く含む嘔吐物がでます。

ほとんどの場合は、2、3日で症状がおさまることが多いですが、1日に嘔吐を何度も繰り返す子もいるようです。


発熱

発熱を伴うこともありますが、ノロウイルス感染症では、37~38℃程度であまり高い熱にならない場合が多いようです。

ほかにも、ノロウイルスに感染すると腹痛や頭痛、悪寒、のどの痛み、倦怠感を伴うこともあります。上記のような症状が1~2日程度続いたあと自然治癒することも多いですが、幼児やお年寄りは脱水症状に注意が必要です。

ノロウイルス感染症は予防できる?

ノロウイルス感染症の予防法をご紹介します。


手洗い、マスク

マスク 女の子
MIA Studio/Shutterstock.com

複数の医師がノロウイルスには手洗いとマスクが有効だと明言しています。

手や指が口や鼻に触れることにより気道の粘膜から感染する可能性があります。 従って手洗いを徹底することとマスクの着用が感染予防には有効です。

出典: AskDoctors

手洗いでは、石鹸を使ってしっかり手洗いすることが大切です。指先や親指周り、しわの多い部分は洗い残しが多いため、特に丁寧に洗うように意識しましょう。石鹸は、ノロウイルスを直接消毒する効果はありませんが、手指の汚れを落とすことでウイルスをはがれやすくすることができます。

またノロウイルスは経口感染でもうつることから、マスクをすることも予防として有効です。流行時期や子どもがノロウイルスに感染したときには、ママやパパもマスク着用を心がけられるとよいですね。


消毒

ノロウイルスにはアルコール消毒は効きません。ノロウイルスに感染した人が触ったドアノブやおもちゃなどは、塩化系漂白剤や、次亜塩素酸ナトリウムを使って拭くなどし、消毒するのも効果的です。家族に感染者がいる場合、ゴム手袋などを使って行いましょう。


調理器具を清潔に保つ

食品を介して感染する場合があるため、まな板や包丁、食器は使い終わったら1回1回洗うようにしましょう。また、調理器具や布巾は、85℃以上の熱湯で1分以上、加熱消毒することで滅菌できます。


食品はしっかり加熱する

ノロウイルスは、熱に弱いです。ノロウイルスに汚染される可能性がある食品の中心部は、85℃から90℃で90秒以上加熱するようにしましょう。

出典:ノロウイルスの消毒方法/食品安全委員会/内閣府

ワクチン接種はできる?

ロタウイルス感染症と症状が似ているノロウイルス感染症ですが、ロタウイルスと違い、ノロウイルスの感染を予防するワクチンは今のところありません。手洗い、うがい、マスクや食品の十分な加熱などの日頃の予防が大事です。

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ノロウイルス感染症のときのホームケア

ノロウイルス感染症は、2~3日で症状がおさまることがほとんどですが、症状が落ち着いても、それから43-7日間菌が排出され続けることがあるため感染を広げないように、家庭での適切なケアが大切です。


水分補給

ノロウイルス感染症は、特別な治療をしなくても自然治癒しますが、激しい下痢や嘔吐を伴うため、乳幼児は脱水症状に特に注意が必要です。子どものおしっこの量が少なくなってきたり、口や舌が乾いている、目が落ちくぼんでいるなどは脱水症状のサインかもしれません。

体への吸収が早い幼児用イオン水や、経口補水液などでこまめな水分補給を心がけましょう。


オムツ替えに注意

おむつ交換
iStock.com/skynesher

ノロウイルス感染症の症状はほとんどが2~3日程度でおさまりますが、ウイルスは便から1週間以上排出されます。オムツ替えのときには、直接便を触らないようにしましょう。

トイレでも、ウイルスが飛び散らないように便器のふたをしめてから流すようにしましょう。


タオルの共有は避ける

感染した人が手を拭いたタオルをほかの人が触ることでノロウイルスに感染することがあります。家族でも、トイレや洗面所のタオルは共有せず、分けるようにしましょう。

保育園、幼稚園登園許可はいるの?

ノロウイルス感染症を発症すると感染性胃腸炎と診断されます。「2012 年保育所における感染症対策ガイドライン」では、感染性胃腸炎は嘔吐や下痢、発熱などの

「主な症状がほぼなくなり、医師が登園可能と認めるまでと」

とあります。赤ちゃんや幼児では、普通便になってから、というのが保育園や幼稚園の登園目安です。

ノロウイルス感染症は、出席停止日数が決められた登園許可が必ず必要な病気ではありません。しかし、保育園や幼稚園によっては、登園許可書を持ってくるように言われる場合もあるので受診し、医師に登園許可書を書いてもらうようにしましょう。

出典:表9 医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症 /2018年改訂版 保育所における感染症対策ガイドライン /厚生労働省

日々の対策がノロウイルスを防ぐ

保育園 元気
iStock.com/maroke

ノロウイルスにかかると、下痢や吐き気、嘔吐などの症状が数日続きます。赤ちゃんの下痢が続くと、いつまで続くのか心配になるママもいるかもしれません。

ノロウイルスは、特別な治療はしなくても自然治癒する感染症ですが、特に、赤ちゃんや子どもは脱水症状を引き起こしたり、重症化する場合もあるので注意が必要です。

ノロウイルス感染症は、ロタウイルス感染症と症状が似ていますが、ロタウイスのように予防接種ワクチンはありません。ノロウイルスに感染しないように、手洗いうがい、マスクの徹底や、調理器具の使い方、食品を十分に加熱するなど日々予防を意識することが大切です。


監修:眞々田 容子(クローバーこどもクリニック)

Profile

眞々田容子(クローバーこどもクリニック)

眞々田容子(クローバーこどもクリニック)

台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。 症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。 お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。

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※記事内で使用している参照内容は、2018年9月4日時点で作成した記事になります。

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