「くる病」という病名を聞いたことはありますか?耳にしたことがあっても詳しいことは知らないママやパパも多いでしょう。くる病とは一時減少したものの、近年また増加傾向にあるようです。くる病の症状や原因、くる病が増加している理由や見分け方などを小児科医にアドバイスしてもらいます。
くる病とは、骨を強くするカルシウムの定着に必要な、ビタミンDやリンが不足して骨が軟化してしまう乳幼児の病気です。くる病の患者には骨の変形や歩き方に異常がみられます。たっちや伝い歩きを始める1歳前後の赤ちゃんのときに発覚することが多いようです。
代表的な症状は脚や頭蓋骨、肋骨の変形などがあげられます。また、О脚やX脚などの足の変形もよく見られる症状です。そのほか、頭蓋骨が手で押すとへこんでしまうほどやわらかい、けいれんが起こりやすいなどの特徴的な症状があげられます。ビタミンDやカルシウム、リンなどの栄養不足から、成長期でも身長や体重の増加が止まってしまう場合もあります。
さらに、筋肉痛や筋力の低下から同じくらいの子どもに比べて転びやすかったり、痛みからぐずることが多くなる場合もあるようです。
外見からではわかりづらいですが、通常、まっすぐのはずの肋骨の端部分が、玉のように丸く膨らみコブのようになってしまう、「肋骨念珠」という症状が出ることもあります。
という専門家の意見もあります。
くる病にかかってしまう原因とはどんなものが考えられるのでしょうか。原因によって、くる病は大きく3つのタイプにわけられます。
ビタミンD、リン、カルシウムなどは、骨の成長にとってかかせない栄養素です。それらが食物から充分に摂取できずに不足すると、骨がきちんと発達できず「ビタミンD欠乏性くる病」にかかる可能性が高くなります。
骨の成長をサポートする栄養素のひとつであるビタミンDは、紫外線を浴びることで体内で作られます。極端に日光浴を避けると、体の中で必要なのビタミンDを作れない状況になります。
そのため日光浴不足も「ビタミンD欠乏性くる病」の原因のひとつといわれています。
未熟児や生まれつき消化器官トラブルがある場合、栄養を体内に蓄えたり、吸収する力が弱いため、栄養不足につながり「ビタミンD依存性くる病」を発症する可能性があります。
ほかにも、遺伝子の異常により過剰にリンが尿に排出されてしまい、血液中のリン酸が不足するために引き起こされる「低リン血性くる病(ビタミンD抵抗性くる病)」もあります。
くる病は、もともと第二次世界大戦中や直後の栄養状態が悪い時代に多く見られた病気です。食糧事情がよくなり、一時くる病の患者は減りましたが、近年「日焼けによる皮膚がんの原因となる紫外線を避ける」という考えがメジャーになりつつあります。皮膚がんを心配して赤ちゃんにできるだけ紫外線を浴びさせない生活をしたり、日光浴をさせないママやパパが増え、ビタミンD不足が起こり、くる病の子どもが増加したと考えられています。
くる病は赤ちゃんの食事にも関係があるといわれています。
食物アレルギーを気にして、ママの自己判断で特定の食物を除去したり、離乳食時期を遅らせたりすることで、食物から摂取するはずのビタミンD不足になり、くる病が増加しつつあると考えられています。食事の開始時期を遅くして食物アレルギーの発症は防げません。適切な時期に、しっかり離乳食を開始してあげて、バランスよく食事から栄養がとれるようにしてあげましょう。
肌によくないとされる紫外線も、骨の成長には欠かせない、と聞くとどうしたらよいのかと迷ってしまうママもなかにはいるのではないでしょうか。
くる病を防ぐためのポイントをご紹介します。
1日10分程度は、適度な日光を浴びるようにしましょう。これなら紫外線を浴びて皮膚がんになる可能性もきわめて少ないといえます。
たとえば散歩をする際、いつもは帽子をかぶせていたところを、数分は帽子を取って散歩させる程度でもOKです。
その日の天候と子どもの体調や様子をチェックしてママが調整してください。
また、紫外線の量は季節や住んでいる地域によって異なるため、晴天の日が少ない地域に住んでいる場合は、日光浴時間を増やしてみてください。
骨の成長には栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。一度の食事で過度な栄養分を無理して摂取する必要はありませんが、骨の成長を助けるビタミンDやリンを多く含む食材を意識してとることがくる病の予防になります。
ビタミンDとリンが多く含まれる食材を下記にあげました。普段の食事にバランスよく含まれているか、チェックしてみましょう。
・ビタミンD…鮭、さんまなどの魚類、きのこ、卵
・リン…魚類、大豆、肉類、乳製品
365日、三度の食事で摂るのは難しいかもしれませんが、栄養バランスを考えて食事にとり入れるようにしましょう。
また離乳食は、母乳だけでは不足しがちな栄養を摂るためにできるだけ生後5~6カ月の間から始めるのがよいとされています。食物アレルギーなど恐れて、ママが自己判断で食物除去をするのではなく、まずかかりつけの小児科に相談してください。
くる病かもしれないと思ったとき、病院へ行く前に家でできる見分け方はあるのでしょうか。また、病院へ行った場合の診断方法についても解説します。
まず、子どもを仰向けに寝かせ、かかとをくっつけて足をまっすぐにします。そのときに膝と膝の間がどのくらいすき間があいているかをチェックしましょう。手の指3本分以上あいていたら、O脚の症状です。くる病によるものかもしれません。
ほかにも、明らかなO脚や、ママから見て歩き方に違和感を覚える場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健士などに相談するとよいでしょう。
くる病の診断には、X線撮影で骨の状態を確認したり、採血してカルシウムやリンの量を調べて見分けます。
くる病と診断されたら、状態に応じてビタミンDやホルモン剤などの投薬を行います。場合によっては手術することもあるので早期発見、骨が変形をする前の治療スタートが大切です。
くる病はビタミンDやリンなど、赤ちゃんの骨の成長に必要な栄養が不足することで発病する病気です。O脚や背中が丸い、歩き方に違和感がある、身長が伸びないなどが主な症状です。しかし、歩き始めたばかりの赤ちゃんや、小柄な幼児の場合、これから歩くのが上手になったり、ぐんぐん成長したりする成長段階、ということもあるでしょう。
過度に心配しすぎず、かかりつけの小児科医や地域の保健士と一緒に見守っていくことが大切かもしれません。
バランスのよい食事と適度な日光浴をすることも、くる病の予防につながります。ビタミンDやリンを普段の食事から摂取し、過度に紫外線を恐れず、一日10分は日光に触れる生活を意識しましょう。
千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。
小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。
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2018年11月20日
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