「キモい」だけじゃなく「しょうもない」…ギリシアの高名な哲学者が想い人の少年に書いた残念すぎるラブレター
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言語学者は、古代文字で書かれたラブレターや詩を研究することがある。中には、読んだだけで鳥肌が立ちそうなものもあるという。『古代文字を解読していたら、研究に取り憑かれた話』(ポプラ社)より、言語学者の大山祐亮さんのエピソードを紹介する――。(第2回)
ギリシアの哲学者が書いたしょうもないラブレター
恋文というのはどう考えても黒歴史にしかなりそうにないものだが、実は案外残っている。そして、内容は大抵キモい。
まずは古代文字で書かれた、想い人に宛てたしょうもないラブレターや詩を紹介しようと思う。そしてラブレター以外のしょうもない内容の古代の手紙も結構あるので、そちらも後でいくつかピックアップして紹介しよう。
まず最初は有名どころから。現代まで伝わっている文献に、『ギリシア詞華集』というものがある。百人一首のように様々な時代の詩が収録されていて、紀元前7世紀頃から紀元10世紀頃までの作品が入っているとされる。
端的に言って短い雑多な詩を無秩序にたくさん集めたものである。年代の幅としては万葉集の時代から現代までの詩を一緒くたにまとめるのと同じようなものだと考えると、そのごった煮具合を察することができるだろう。
詩の出来という観点から見ても、あまり文学的な価値はない。しかし、その中に哲学者のプラトンがアステールという少年に向けて詠んだとされる詩が残っている。短いのでさっさと紹介してしまおう。
「僕の星(アステール)である君は、星々を見ている。僕が空になれたらいいのに。たくさんの眼でお前を見つめられるように」(Greek Anthology VII, 669) |
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