米価格の最高値更新に慌てる必要はない…鈴木憲和農水相の「大増産しない」方針に一理も二理もあるワケ
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コメの価格がいまだ高騰しているのに、大増産せず、また価格にも介入しないと発言した鈴木憲和農水相に批判が集まっている。しかし、現役農家のSITO.さんは「コメは需要に応じて生産しなくては価格の大暴落を招き、離農の原因になる。また価格は市場原理に任せる必要があるため、鈴木農水相が間違っているわけではない」という――。
物議を醸している来年度の生産量
高市政権で、新たに農林水産大臣に就いた鈴木憲和氏のさまざまな発言が物議を醸しています。早くも辞任を求める声が出たり、野党議員から資質を問われたりと方々から批判を浴びていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
もっとも批判されているのが、コメを「増産」から「減産」へと転じさせたとされている点です。しかし、これは誤解でしょう。じつは「減産」したのではなく、「需要予測に応じて調整した」に過ぎないのです。
次年度(令和7/8年)のコメ生産量の大枠は、そもそも石破内閣時に策定されています。食糧部会や閣僚会議の資料には、加工用や輸出用を含めた稲作全体では増産するとされていたものの、国内主食用米は「需要に応じた生産を図る」とされていました。つまり、「新内閣の誕生」と「需給見通しの発表」の時期が重なっただけで、高市総理や鈴木農水相がコメの減産を指示したわけではありません。
また、次年度のコメの需要量には大きく幅が設けられ、697.4万トン〜711.3万トンと計算されており、その最大値である711.3万トンが生産量の見通しに採用されています。この数値は、国民一人あたりのコメの年間消費量に総人口を乗じただけでなく、玄米を精米した場合の「とう精実績」、外国人観光客による「インバウンド需要」を加味した上で決められた、非常に確度の高いものです。
国民にも「需要に応じた生産」が最善
じつは今年度――つまり令和7年産のコメは、フタを開けてみれば近年類を見ないほどの豊作で、需要を大きく上まわる748万トンという生産量が予想されています。つまり、今現在はコメ不足どころか民間在庫がたっぷりある状態です。
それなのに、もしも来年度にコメを短期的に大増産して需要を大きく上まわった場合は、さらに在庫が積み上がり、結果的に販売価格が暴落し、生産者であるコメ農家の収益が不安定になることで、離農や作付け放棄が進む可能性があります。
つまり、コメの需要量を考えず無計画に大増産すれば、確かに消費者は一時的にはコメを安く買えるようになるでしょう。その代わりに、次年度以降は生産者が減ることで供給量が減り、むしろ価格は上がってしまうのです。
コメづくりは年に一度の大勝負。しかも一度の増産ミスが、翌年以降も響いてしまいます。だから勢いで作りすぎるよりも、食べられる分をできる限り正確に見極めて生産することが、国民みんなが安心して食べられる価格を守ることにつながるのです。まずは、このことを多くの方に知ってもらえたらと思います。





























