資生堂は"同じ失敗"を繰り返している…「過去最大の赤字」を招いた900億円買収の"致命的誤算"

資生堂は"同じ失敗"を繰り返している…「過去最大の赤字」を招いた900億円買収の"致命的誤算"

株価がピーク時の2割に低迷し続ける背景

資生堂は、今年12月までの通期の業績予想を下方修正し、最終損益が520億円の赤字になる見通しだと発表した。赤字額は過去最大だが、その原因は何なのか。淑徳大学経営学部の雨宮寛二教授は「買収した米国ブランドの不振を背景に、米州事業ののれんを減損したことが主な理由だ。だが、同じようなことは過去にも起きており、経営陣の“見通しの甘さ”が再び露呈した形だ」という――。

買収した「米国のブランド」をいかせず、“また”減損

資生堂の2025年12月期の連結最終損益が、昨年度の108億円の赤字に続き、520億円の赤字になる見通しとなった。この額は、2001年3月期の450億円の赤字を超え、過去最大となる。

赤字額520億円は、米国で468億円の減損を計上した影響が大きく、この減損は、2019年に約8億4500万ドル(約900億円)で買収したスキンケアブランド「Drunk Elephant(ドランク・エレファント)」が主因となっている。

資生堂が買収したブランドで減損が生まれたのは、これが初めてではない。2010年に約19億ドル(約1800億円)で買収した自然派化粧品会社である「Bare Escentuals(ベアエッセンシャル)」が販売不振に陥り、2013年3月期に286億円、2017年12月期に700億円超の減損をそれぞれ計上している。

どちらのケースにおいても共通するのは、撤退の見通しの甘さだ。ベアエッセンシャルは、ミネラル系メーキャップ化粧品の草分けとして米国で高い支持を受け、ミネラルファンデーション市場でトップブランドの地位を築いていたことから買収に至ったが、資生堂は、その成功体験に縛られたため、最初の減損を迫られた2013年に見切りをつけることができなかった。

実際、売却したのは、それから8年後の2021年で、「ローラ メルシエ」など他の2つのブランドを含めた売却額は7億ドルで、その額はベアエッセンシャル買収価格の4割にも満たない水準であった。

買収後の“ブランド育成”や“市場開拓”が「不十分」

そのうえ、2024年12月期には、売却対価が回収不能になる可能性から、引当金128億円を計上している。戦略的買収にはほど遠く、経済的価値を生み出せていないだけでなく、買収後のブランド育成や市場開拓が不十分と言わざるを得ない。

資生堂は、これまで成長戦略の一環として、トップブランドのM&A(合併・買収)をひとつの柱に据えて世界展開を進めてきた。

しかしながら、資生堂が本来持つ強みである「価値創造力」や「価値伝達力」を買収先の企業にどう結びつけていくかが明確になっていないことから、経営統合によるシナジーが生み出せていない。

資生堂が捉える価値創造力とは、「人を一生という時間軸で捉え、肌・身体・心の全体を対象に研究」するR&Dや、「安心・安全な品質への信頼を担保」する生産技術・品質保証を指し、価値伝達力とは、「感性に訴える新しい文化・価値を提言」するクリエイティブや、「感動を生み、生活者と深く繋がる顧客体験」を届けるおもてなしの心を意味する。

資生堂は創業以来、この価値創造力と価値伝達力を、一体となった複合能力として磨き上げてきた。

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2025.12.02

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