英語力ゼロの「普通の子」が海外の超名門大に合格する…広島の離島の公立校が行う「詰め込み」とは真逆の授業
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【前編】東大合格者ゼロは「どうでもいい」…海外大学合格者105名の「離島の公立校」をつくった広島県知事の原体験 今年、県立校にもかかわらず海外大学に延べ105名もの合格者を出した学校がある。瀬戸内海に浮かぶ大崎上島にある広島叡智学園だ。吉村薫校長は「いわゆる一般的な家庭に育った“普通”の子どもが多い」という。いったいどんな教育を行っているのか。ライターの鬼頭勇大さんが取材した――。(後編/第2回)
なぜ広島の離島の学校が人気なのか
公立の中高一貫校が増加している。1998年の学校教育法の改正を受け、現在では130校ほどに増えている。その中で、一際注目を集めているのが、2019年に開校した県立広島叡智学園だ。
学校は本州からフェリーに乗り30分ほどで到着する大崎上島の船着き場から、さらに車で15分ほどの場所に位置する。
利便性が良い場所にあるわけでもない。公立なので中学の授業料は無料とはいえ、全寮制だ。にもかかわらず、2026年度の志願倍率は、40人の定員に対して295人と7.4倍。そもそもの募集人数が少ないこともあるが、かなりの人気である。
県立校ではあるが、吉村薫校長は「県外からの関心も一層高まりつつある」と話し、志望者のうち4割ほどを県外勢が占めるという。なぜ「島の学校」がこれほど人気になっているのか。
叡智学園では今年3月に「1期生」が卒業を果たした。驚くべきは、京都大学や名古屋大学など国内難関校だけではなく、欧米を含めた世界の有名大学に延105人もの合格者を出していることだ。
海外の有名大学に105名も合格
米国で公立大学の最高峰とされるカリフォルニア大学バークレー校や、名門私立として知られるペンシルベニア大学といった学校に加え、「QS世界大学ランキング」で9位にランクインしたユニバーシティ・カレッジ・ロンドンには4人の合格者を出した。ちなみに同ランキングで、国内最難関とされる東京大学は32位である。
こうした進学実績を支え、県内外から大きな注目を集めている背景には、同校が国際バカロレア(IB)の認定校であることが挙げられる。
IBとは、スイス・ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が1968年に始めた国際規格の大学入学資格制度だ。探究型の学習、教科横断型の学習のカリキュラムとなっており、授業のほとんどが英語で行われる。
年齢に応じて4つのプログラムがあり、同校では11~16歳を対象とした「MYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)」と、16~19歳が対象で国際的な大学入学資格を取得できる「DP(ディプロマ・プログラム)」に認定されている。叡智学園では、在籍するすべての生徒がIBのDPを履修する。これは日本の公立校では初めてだ。
では、叡智学園ではどのような生徒が、どんな授業を受けているのか。





























