3個100円「激安ヨーグルト」を捨ててV字回復…従業員40→2人に激減、瀕死の乳業メーカーが蘇った"逆転の一手"
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3個100円のヨーグルトで知られた広島の老舗乳業メーカー・野村乳業は、価格競争に巻き込まれ、40人ほどいた従業員が2人に激減する危機に陥った。廃業寸前の中で選んだのは、祖業だったヨーグルト製造を完全に捨て、植物乳酸菌による“腸活飲料”へ舵を切る大胆な転換だった。「100均の野村」と揶揄された企業が、どうやってV字回復を果たしたのか。フリーライターの伏見学さんが取材した――。
薄利多売で追い込まれた老舗乳業メーカー
広島空港から徒歩10分。丁寧に手入れされた芝生が一面に広がる敷地に、洗練されたデザインの白い建物が佇む。ここは広島の食品メーカー・野村乳業の工場兼オフィスである。

同社の主力商品は植物乳酸菌飲料「マイ・フローラ」。乳酸菌にはヨーグルトやチーズなどに含まれる「動物乳酸菌」と、野菜や果物などの表面に生息する「植物乳酸菌」の2種類がある。後者は過酷な環境でも育つため、食べると生きたまま腸に届くのが特徴である。にんじん汁やセロリ汁を植物乳酸菌で発酵させたマイ・フローラは、700ミリリットルで約1300円という強気の価格設定にもかかわらず、腸内環境の改善を求める健康志向層から強い支持を得て、2019年の発売以来、販売数は2025年3月時点で累計3500万杯を突破した。
世界でも珍しい独自の植物乳酸菌発酵技術を確立し、今でこそ付加価値の高い商品開発にこだわりを見せる同社だが、かつては薄利多売のビジネスモデルに苦しんだ。3個入りカップヨーグルトを100円で販売していた同社は、“100均の野村”と揶揄され、価格競争の末に経営が傾いた。約40人いた従業員は2人にまで激減するという危機的状況に陥ったのである。
「価格を下げるという競争は、我々のような企業は絶対に大手には敵わないです。勝てる道理がない。本当はやってはいけないことなのに、そちらの方へ進んでしまった」と野村和弘社長は当時を振り返る。
どん底からいかにして野村乳業は這い上がったのか。地方の一般的な乳業メーカーが“腸活専門メーカー”へと転身を遂げた、その足取りをたどった。





























