20兆円の資産に見向きもしなかった…突然姿を消した「ビットコイン生みの親」を大真面目に追ってわかったこと
誰も解き明かせない「21世紀最大の謎」に迫る
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暗号資産ビットコインの “創造主”は、名が知られるだけで今も誰もその正体を知らない。作家の橘玲さんは「サトシ・ナカモトの周囲に次々と現れる奇人変人。ビットコインがたどった数奇な運命はミステリーのように面白い」という――。
「サトシ・ナカモト」とは何者だ?
最近刊行された『サトシ・ナカモトはだれだ?』(ベンジャミン・ウォレス著、小林啓倫訳、河出書房新社)が暗号資産に関心の高いひとたちのあいだで話題になっている。ネタバレしてもかまわないと思うが、本書を最後まで読んでも謎は解明されない。もしそれを突き止めていたら、世界的な大ニュースになっているだろうから、これは当然だ。
とはいえ、解けない謎に大真面目に挑んだところに、この本の無類の面白さがある。
サトシ・ナカモトは2008年10月31日に、ビットコインの仕組みを説明する「ホワイトペーパー」を発表したあと、何人かの支援者とメールやメーリングリストで交流し、09年1月にビットコインの最初のソフトウェアを公開した。
だがその翌年の末頃から開発の中核的な役割を協力者たちに譲るようになり、11年初頭には活動をやめてしまう。

約20兆円の「眠ったままの暗号資産」
その後、14年3月7日、『ニューズウィーク』誌がドリアン・ナカモトという日系アメリカ人をサトシだと報じたとき、SNS上に「私はドリアン・ナカモトではない」というメッセージを投稿したとされるが、それ以降、完全に姿を消してしまった。
サトシが創造したビットコインは、2010年にピザ2枚に対して1万ビットコインと交換されたが、その後の15年間でこのピザの値段は12億ドル(約1760億円)になった。
「創造主」であるサトシのウォレットには推定110万ビットコインが保有されており、その時価総額は1350億ドル、日本円にして20兆円ちかくになるが、この莫大な資産は2010年以来、1ドルたりとも動かされていない。





























