日本から消えた「コーリン鉛筆」がタイで復活…年1億本売れる国民的ブランドに育てた"破天荒な元社員"の執念
借金70億円で倒産…国産鉛筆が22年後に"里帰り"を果たすまで
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1997年に倒産し、日本から姿を消した老舗文具ブランド「コーリン鉛筆」。その国産鉛筆が、いまタイで独自の進化を遂げ、国民的ブランドとして親しまれている。年間販売本数は再建当初の6倍、2019年には日本市場への“里帰り”を果たした。再生の立役者は、月給12万円、肩書きもないまま現地工場に踏みとどまった“破天荒な元社員”だった。その執念と再建の歩みに、タイ在住ライターの日向みくさんが迫る――。
日本から消えた「鉛筆ブランド」がタイで大人気に
「コーリン鉛筆って知ってる?」
筆者の問いに、タイ人の友人は懐かしそうに笑った。
「あぁ、赤い箱のやつ! 小学校でよく使ってたよ」
三角顔のロゴで知られる「コーリン鉛筆」。かつて日本の小学生に親しまれたこのブランドは、1997年に負債70億円を抱えて経営破綻し、日本市場から姿を消した。
ところがその後、海を越えたタイで“定番ブランド”として生き延びていた。図工の時間になると、タイの子供たちは赤や青の鉛筆を握りしめ、夢中で紙いっぱいに色を広げている。

筆者撮影 鮮やかな発色となめらかな書き味に定評がある
かつて三菱鉛筆、トンボ鉛筆に次ぐ業界第3位のシェアを誇った老舗メーカーは、なぜ異国の地で蘇り、独自の進化を遂げたのか――。その舞台裏には、倒産後も現場に踏みとどまった一人の社員・井口英明の執念と20年にわたる再建のドラマがあった。

























