NHK大河「べらぼう」はこの大転落をどう描くのか…政権トップの座から地位も財産も愛息も失う田沼意次の失意

NHK大河「べらぼう」はこの大転落をどう描くのか…政権トップの座から地位も財産も愛息も失う田沼意次の失意

江戸時代後期の老中、田沼意次とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「斬新な経済政策を矢継ぎ早に打ち出す有能な人物だったが、10代将軍家治が亡くなってすぐに、すべての権限を取り上げられてしまった」という――。

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2019年4月7日、イギリス・ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催された「オリヴィエ賞2019 with MasterCard」に出席した渡辺謙

平賀源内、次期将軍、老中筆頭…不審死の黒幕

田沼意次(渡辺謙)は大丈夫なのか、ここで蹴落とされてしまうのか、と感じた視聴者も少なくなかったのではないだろうか。ここ2回ほどの、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の展開を受けての話である。

まず、第15回「死を呼ぶ手袋」(4月13日放送)では、10代将軍徳川家治(眞島秀和)の嫡男で次期将軍に内定していた家基(奥智哉)が、鷹狩の最中に倒れて急死し、意次が毒を盛ったのではないか、という噂が蔓延した。しかし、意次の「天敵」だった老中筆頭の松平武元は、幸いにも意次を疑っておらず、2人して真犯人を探そう、という話になった矢先に、今度は武元が毒殺されてしまった。

「べらぼう」では、これらの「事件」の背後には、一橋治済(生田斗真)がいて、すべてはこの人物の陰謀であることが仄めかされた。

そして、陰謀の流れは第16回「さらば源内、見立は蓬莱」(4月20日放送)にもおよんだ。意次に頼まれて家基の「毒殺」の真相をつかんだ平賀源内(安田顕)も、人殺しの罪を着せられて投獄された挙句、獄死してしまった。やはり背後で一橋治済が、将軍の継嗣暗殺の証拠隠滅のために暗躍し、源内を消したという描き方だった。

田沼意次の全盛期はこれから

家基は本当に毒殺されたのか。一橋治済は本当に家基をはじめとする人たちの死の黒幕なのか。それはわからないし、そのことを証明する史料はない。「べらぼう」で描かれたミステリーは脚本家の創作である。ただ、この一連の死の結果、事態は治済にとって望ましい方向に進んだことだけは間違いない。

そうであるならやはり、意次は大丈夫か、と思えてくる。だが、結論を先にいえば、この時点では意次はなんら責めを負うことはなく、むしろ、ここから先に全盛期を迎える。しかし、しばらく先に訪れる悲劇まで見通すと、結局は意次も、治済の手のひらで踊らされていたにすぎなかった、と思えてくるのである。

じつは、かなり早い時期から、意次と治済は浅からぬ関係にあった。意次の弟の意誠は早い時期から一橋家に仕え、意次が大名に取り立てられた翌年の宝暦9年(1759)には家老に昇進。意次が老中になった翌年の安永2年(1774)に死去したが、その子意致おきむねは家基が死んだ安永8年(1779)、父と同じく一橋家家老に抜擢された。

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2025.05.09

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