視聴者に見放され「マスコミの代弁者」に…"斎藤元彦知事の復活"が示すモーニングショー・玉川徹氏の限界
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テレビのワイドショーでは、兵庫県県知事選で再選を果たした斎藤元彦氏に関するニュースが連日報道されている。『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)を書いたノンフィクションライターの石戸諭さんは「ワイドショーのなかでも、羽鳥慎一モーニングショーに出演している玉川徹氏の発言は特に話題になる。『怒りの代理人』として高視聴率を叩き出してきたが、マスメディア不信によって批判する側から批判される側となった」という――。
「異端中の異端」がテレビを背負っている
玉川徹が“テレビ”というマスメディアを背負う存在になっている――。
やや大袈裟にいえば、最近、私はそう思いながら彼の発言を見ていることが多くなった。
最近は連日話題の兵庫県・斎藤元彦知事関連のニュースだろうか。11月25日、テレビ朝日系列朝の看板番組「羽鳥慎一モーニングショー」(以下、モーニングショー)でも斎藤陣営に関わったPR会社の折田楓代表に降りかかった公選法違反疑惑を取り上げていたが、公選法のあり方から、折田氏のnoteの内容まで広くフォローしながら鋭く問うような姿勢は見せていた。
最近は兵庫県知事戦を巡って、選挙報道のあり方についても「既存メディア」への注文も含めて言及していたが、それらも当たり前のように「こたつ記事」として配信され、当たり前のように賛否さまざまな反応を引き起こす。
注目ニュースのとき、玉川が何を言っているのか聞きたい――。彼の発言を支持する視聴者だけでなく、批判するほうも待っている。
玉川はテレビ朝日報道畑の“大御所”ではない。一貫してワイドショーを主戦場にしており、現場ディレクター兼出演者としてキャリアを積んできた。彼の強引な取材手法はしばしば社内でも物議を醸し、政治部から抗議にも近い物言いがついたこともある。
報道部門がテレビメディアの王道ならば、彼は業界内の異端中の異端である。そんな異端がテレビを代表する存在になっていること自体が興味深い現象なのだ。
「怒りの代理人」として勝ち組に上り詰めた
「怒りの代理人」――これはかつて玉川徹が自らを称して使っていた言葉である。日本で一番影響力のある“会社員”だったと言っていいだろう。注目度を一気に高めたのは2020年から始まった新型コロナ禍の時だ。モーニングショーで連日、舌鋒鋭く故安倍晋三政権の新型コロナウイルス対策を批判した。
行き過ぎた発言は一度や二度では済まないが、彼の怒りは文字通りの意味で視聴者を刺激し続けた。彼の言葉に反感を持つ者もいれば、逆に熱烈に擁護する者も生み出す。そんな玉川は2023年に定年退職を迎えたあとは、フリーランスとして契約を結び直して出演を続けている。
一社員、現在は元社員が連日コメンテーターを務めてからのモーニングショーの視聴率は、とにかく絶好調の一言である。新型コロナ禍を完全な追い風として、2019年度の平均視聴率は9.6%を記録し2020年3月20日に記録した12.7%は19年度、同番組の最高視聴率となった。
以降、いまいち数字が伸び悩んでいるという評価だったモーニングショーは、各局がずらりと主力を並べた朝のワイドショー競争で一気に勝ち組に上りつめた。