村上春樹の原稿〆切の"言い訳"も秀逸…「猫が原稿の上で寝てしまい」ほかなぜか許される作家7人のお詫び文例
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すべての仕事には〆切がある。そのデッドラインを巡る攻防には、当事者たちの人間味があらわれる。作家の本田健さんが、原稿を催促する編集者を巧みにかわして期日延期を勝ち取ろうと繰り出す古今東西の作家たちの言い訳フレーズを紹介する――。 ※本稿は、本田健『作家とお金』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
ユーモアで乗り切る〆切地獄
作家の人生には、避けて通れないものがいくつかありますが、その一つが〆切です。
〆切とは、作品の完成を求められる恐怖の瞬間であり、多くの作家にとっては、一番大きなストレスの源だといえるでしょう。原稿を取りに来た編集者が、借金取りに見えてきます。まるで、彼らが借金の催促に来ているよう感じてしまうのです。
そういうわけで、有名な作家たちは、そんな恐怖の〆切にも対抗する方法を編み出しています。それは、ユーモラスでクリエイティブな「言い訳」のスキルを磨くことです。
〆切に間に合わないとき、ただ「遅れます」と言うのではダメと言われるだけでしょう。うまくユーモアを交えた言い訳をすることで、編集者の怒りを和やわらげ、仕方がないなぁと思わせられたら、勝ちというわけです。
ここでは、実際に使われた(あるいは使われたかもしれない)ユニークな言い訳の数々を紹介しながら、〆切との戦いについて見ていきます。
いままでに聞いた「しゃれた言い訳」は、「インスピレーションの神が休暇中です」というものです。
これは、創作のムードがどうしても乗らないときに使える言い訳でしょう。
編集者に、
「神様も休むことが必要なんです。だから、私の創作意欲も今は充電中です」
と伝えれば、ちょっとした笑いを誘うことができるでしょう。ですが、編集者が信心深い場合には、別の言い訳を考えたほうがいいかもしれません。
言い訳の天才になるためには、ただ単に面白いことを言うだけでなく、相手の気持ちを和らげることが重要です。
編集者も人間ですから、ユーモアを交えたやり取りができれば、多少の遅れも理解してくれることがあります。ただし、何度も同じ言い訳を使うと信頼を失うので、バリエーションを持たせなければならないでしょう。