「正解」を答えるより、「疑問」を見つけることが大切!子どものグローバル教育を考える【第2回】

「正解」を答えるより、「疑問」を見つけることが大切!子どものグローバル教育を考える【第2回】

前回の記事では、大人も知っておくべき社会の大きな変化についてご説明しました。今回はそんな社会の変革期を生き抜くために子どもに必要な教育や、幼児期に準備できることについて考えていきます。

まずは大人が「30年後の世界」を学ぶべき。子どものグローバル教育を考える【第1回】

まずは大人が「30年後の世界」を学ぶべき。子どものグローバル教育を考える【第1回】

執筆:山﨑瑛莉

上智大学グローバル教育センター特任助教。専門は開発教育・ESD、比較教育学。大学では、グローバル教養教育の開発や提供、海外の大学や国際機関との学術協定・学生交流のプログラム等を担当。また、主にアフリカをフィールドとして、社会科教育や持続可能な開発目標(SDGs)に関する研究を進めている。

子どもの教育はどうなる?

多様化し、ますます混沌とする時代を生きていくために、子どもたちにはどのような力が必要なのでしょうか。教育現場ではどのように考えているのか、ということに焦点を当ててお伝えします。


「変化に対応する力」が必要

多様化した社会では、その変化に対応する能力が求められます。これは、具体的には「自分で問題を発見し、それを解決するために自ら行動する力」です。これからの教育も、この力をつけることが求められています。

その教育のアプローチとしてはこのようなものがあります。

「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development:ESD)」

ESDとは、目の前にある状況から何が問題なのか発見し、その問題を自分自身でよく考え、問題を解決するために行動する、という学習者の主体的な学びを促進する教育活動です。


今、教育は大きな変革期

2020年、現在3歳の子どもたちが入学する小学校では、新しい学習指導要領が本格的実施される予定です(注1)。

そこでは、この ESD(主体的な学び)がより重視されることになっています。 ただ知識を得る学習ではなく、自分自身で考える姿勢を身につけることが求められていくでしょう(注2)。

今、学校教育も大きく変化しています。

今からできる準備は?

こうした社会の変化に向けて何か準備できることはあるでしょうか?それは決して難しいことではありません。子どもたちはすでに、その力を持っているからです。


幼児期は絶好の機会

特に幼児期は「自分で問題を発見し、それを解決するために自ら行動する力」の基盤を築く、絶好の機会です。

子どもは新しい世界が開かれるたびに、「これはなに?」「なぜ?」「どうして?」と疑問や好奇心を持ちます。この疑問や好奇心を持つことがとても大切です。これから状況が変化する社会の中では、一つの答えがあるとは限らない課題がたくさん出てくるので、疑問を持ち続けることが大切になってくるからです。

答えではなくて「なぜ」と問うこと、他の人の意見を聞くこと、そして自分でさらに考えること。そういう過程を積み重ねていくことで形成されていく力が、「主体的に学ぶ姿勢」を培っていきます。


大人にできることは?

大人が大切にしていくべきことは、子どもたちの「なぜ」や「どんなふうに?」という疑問を大切にすること、一緒に考えることを「続ける」ことです。答えがわからなくてもいいのです。わからないことがあって当然。

だけど、すぐに答えを教えるのではなく、ゆっくりと時間をかけて「なぜ?」を一緒に味わっていくことが、子どもたちの学びを促進します。

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将来が予測できない社会では、“未来を「創造」するチャンスがたくさんある”とも考えることができます。幼児期に日々の「なぜ?」を 大事にして、子どもたちの「自分で問題を発見し、それを解決するために自ら行動する力」を育んであげましょう。

予想がつかない30年後の社会で、その力が大きく役に立つかもしれません。

訳注

注1:幼稚園は平成30年(2018年)、中学校は平成32年(2021年)から、それぞれ新学習指導要領が本格実施される予定。

注2:文部科学省「新しい学習指導要領が目指す姿」

執筆:山﨑瑛莉

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上智大学グローバル教育センター特任助教。専門は開発教育・ESD、比較教育学。大学では、グローバル教養教育の開発や提供、海外の大学や国際機関との学術協定・学生交流のプログラム等を担当。また、主にアフリカをフィールドとして、社会科教育や持続可能な開発目標(SDGs)に関する研究を進めている。

編集部より

最近よく耳にする「持続可能な…」という言葉。この言葉がこれからの子どもの教育にも深く関わっていることがわかりました。

また「グローバル教育」とは、英語や異文化を学ぶだけではなく、考え方や学びの方法も含めた教育活動であるということを知ることもできました。

社会の大きな変革期だからこそ、私たち大人もいろんな物事を子どもと一緒に積極的に学ぶことが必要なのかもしれません。それが幼児期の子どもの「学ぶ力」に大きく関わってくるということを改めて実感した記事でした。山崎先生、ありがとうございました。

2017.01.14

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