まずは大人が「30年後の世界」を学ぶべき。子どものグローバル教育を考える【第1回】

まずは大人が「30年後の世界」を学ぶべき。子どものグローバル教育を考える【第1回】

「将来は何になりたい?」子どもたちによく投げかけられる質問ですが、その「なりたい職業」は、子どもたちが大人になる頃には、もう必要のない職業かもしれません……これからの時代、子どもの教育はどうなる?などの疑問についてグローバル教育の研究者がご説明します。

子どものために、まずは大人が学ぶべき

KIDSNA編集部の白石です。先日、グローバル教育の研究者に「どうやったら子どもをグローバルに育てられますか?」ときいたら「まずは、大人が学ぶことが大事ですよね」とのお返事。

その言葉にドキっとしました。

いつも子どもの教育について考えていたつもりですが、親が学ぶべきことが必要なんて……

なぜ大人が学ぶことが必要なの?なにを学ぶべき?子どもの幼児期にできることは?もっと知りたい!と思い、上智大学で教鞭をとるグローバル教育研究者の山崎先生に記事の執筆をお願いしました。

社会の大きな変化と、そこで生き抜くためにこれからの子どもに必要な力、親が考えるべきことについて、わかりやすく説明してもらったので、ぜひお読みください。

執筆:山﨑瑛莉

上智大学グローバル教育センター特任助教。専門は開発教育・ESD、比較教育学。大学では、グローバル教養教育の開発や提供、海外の大学や国際機関との学術協定・学生交流のプログラム等を担当。また、主にアフリカをフィールドとして、社会科教育や持続可能な開発目標(SDGs)に関する研究を進めている。

30年後の社会はどうなる?

みなさんは、今の子どもたちが大人になる、30年後の社会を想像できるでしょうか?どんな未来予想図を描いていますか?

今から30年前に遡って考えてみると、今の社会はなかなか想像できませんでしたよね。インターネットが登場したのは1983年。携帯電話もショルダーバッグ型でした。今やインターネットで世界中の情報を見ることができ、スマートフォンで動画を撮影でき、家でお買い物をすることもできます。Siriや Pepperくんと「会話」ができるように、高度な音声技術や人工知能(AI)研究も進んでいます。

でも、これだけの進化を遂げた30年を経験した私たちでも、未来を想像することは難しいものです。もしかすると、30年前に現代を見るよりもずっと、難しいかもしれません。

消滅する可能性のある職業は49%

今の子どもたちが社会の中心となって活躍する2030~40年代。英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らの研究によると、技術革新などにより今後10~20年で消滅する可能性が高い職業は、現在日本で働いている人の職業のうち49%(注1)、米国で47%(注2)にあたると言われており 、それだけ社会変化が起こるということを示唆しています。

日進月歩の技術革新がアクセルとなって、これからの社会における職業や産業構造の変化のスピードはさらに加速するでしょう。これから先、ますます想像できないほどの変化がありうる社会で、今の子どもたちはどのような社会で仕事をし、どのような生活を営むのか、想像することができますか?

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身近なところにあるグローバル化

世界はすでに「グローバル化」といわれて久しい状況です。日本社会も大きく変化しました。


町やコンビニで

最近、町を歩いていて、海外からの観光客が増えているな、と実感したことはありませんか?日本を訪れる外国人数は1980年には約132万人でしたが、2015年には約1974万人と、25年で約15倍になりました(注3) 。

在日外国人の数も増加しており、コンビニや飲食店で国籍の違う方と出会うことも少なくありません。 「他の国や地域」の人たちは、遠い海の向こうにいるのではなく、すぐとなりにいる時代です。


幼稚園や保育園でも

幼稚園・保育園や学校も例外ではありません。同じクラスに、日本以外で育ったり、違う言葉を話したりする子どもがいることが、今では珍しくなくなってきています。

それに対応する幼児教育も行われるようになってきました。グローバル化は身近な場所に広がっているのです。


身近なモノも

今、みなさんの手の届くところにあるモノもそうです。例えば、チョコレートの原料であるカカオは、ガーナやコートジボワールからきています。お気に入りのスカーフはカンボジアで織られているかもしれません。今、手にしているスマホをより薄くするためには、コンゴにある希少金属が必要です。

モノをひとつとっても、日本だけではない国や地域とのつながりが見えてきます。今、私たちが生きているのは、すでにグローバル化が進んだ多様な社会です。

これからの子どもの教育とは

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以上、今回は社会の大きな変化についてご説明しました。

次回は、そこで生き抜くために子どもに必要な力や、それを身につけるために必要な教育、親が知っておくべきことについて考えていきます。

「正解」を答えるより、「疑問」を見つけることが大切!子どものグローバル教育を考える【第2回】

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引用文献

注1: 野村総合研究所
注2:Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne,THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?
注3:日本政府観光局

執筆:山﨑瑛莉

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上智大学グローバル教育センター特任助教。専門は開発教育・ESD、比較教育学。大学では、グローバル教養教育の開発や提供、海外の大学や国際機関との学術協定・学生交流のプログラム等を担当。また、主にアフリカをフィールドとして、社会科教育や持続可能な開発目標(SDGs)に関する研究を進めている。

編集部より

この記事を読んで、身近なところにもじわじわと押し寄せているグローバリゼーションについて、まずは大人が知ることができたのではないでしょうか。「消滅する可能性のある職業は49%」ということを知って、正直驚きました。自分の子どもの将来にもこの数字は影響するかもしれません。

そして今の私たち世代の価値観が、これからの未来、必ずしも正しいこととして続かないかもしれないと改めて感じました。だから大人も新しい情報を知り、学んでいく必要があるんですね。次回のこれからの幼児教育や、新しい学習指導要領についての記事も必見です!

2017.01.09

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