【小児科医監修】集団保育前に接種しよう。肺炎球菌とヒブワクチンについて

【小児科医監修】集団保育前に接種しよう。肺炎球菌とヒブワクチンについて

生後2カ月から定期予防接種が受けられる肺炎球菌感染症とヒブ(Hib)感染症は2歳以下から集団保育を予定する子どもには、感染に注意が必要な病気です。上高田ちば整形外科・小児科副院長の千葉智子先生の監修のもと、ワクチンの同時接種や追加接種のタイミング、副反応について解説します。

肺炎球菌感染症とヒブ(Hib)感染症とは

肺炎球菌感染症とヒブ感染症は、咳やくしゃみなどの「飛沫感染」でうつります。潜伏期間は、1~4週間程度ですが、ほとんどが2~4週間に感染することが多いようです。

くしゃみをする赤ちゃん
mina Armina/Shutterstock.com

肺炎球菌感染症

肺炎球菌による感染症で、脳を包む膜に感染が起きてしまう細菌性髄膜炎や菌血症、敗血症、重い肺炎や細菌性中耳炎などの病気を引き起こす可能性があります。


ヒブ感染症

ヘモフィリスインフルエンザ菌b型(Hib)という細菌による感染症で細菌性髄膜炎の原因菌として知られています。細菌性髄膜炎の感染は、生後5か月頃から急に増え、感染した子どもの約66%は 0〜1歳児です。ほかにも、急速に呼吸困難の進行する急性喉頭蓋炎や肺炎の原因となります。

集団保育の子どもは感染に要注意

肺炎球菌感染症は大人や、高齢者を含めて誰もがかかる危険性のある感染症です。特に集団保育の子どもは2~3倍かかりやすいと言われています。きょうだいがかかったら、きょうだい間での感染にも注意が必要です。2歳以下の子どもは肺炎球菌に対する免疫がほとんどなく、小児の肺炎球菌感染症は発症の大多数が重症化します。

同じくヒブ感染症も、子どもだけでなく、大人も感染する危険性のある感染症ですが、肺炎球菌感染症と同様、集団保育の子どもは、家庭保育の子に比べて2〜3倍かかりやすいと言われています。

肺炎球菌やインフルエンザ菌に感染すると、発熱や不機嫌などの症状のあとに、ぐったりする、けいれん、意識がなくなるなどの症状がみられることがあります。血液検査をしても風邪 との区別がつかないことも多く、早期診断が難しい病気です。診断がついても、抗菌薬が効かない耐性菌が多く、治療が困難です。


肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種について

肺炎球菌とヒブ感染症のワクチンの種類や予防接種の金額、接種のタイミングなどについてご紹介します。


ワクチンの種類と接種方法

肺炎球菌もヒブも不活化ワクチンで、皮下接種です。


予防接種の費用

肺炎球菌とヒブは、生後2ヶ月から5歳の子どもは定期接種ですので、自己負担なしで予防接種ができます。

子どもの体調不良などで接種期間が過ぎてしまったりしないよう注意が必要です。とくに子どもが5歳を超えると助成金が効かず、実費での接種となるため、接種期間内に計画的に接種しましょう。

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接種のタイミング

肺炎球菌の接種のタイミング

肺炎球菌のワクチン接種回数は合計4回で、生後2ヶ月から接種できます。4週間隔で3回接種するのが標準です。そして、1歳の誕生日を迎え、かつ、3回目の接種から90日以上経過していたら追加で4回目を接種するのが一般的です。

ただし、初回の接種の月齢や年齢によって接種の間隔や回数が変わってきますので小児科医と相談しながら進めましょう。


ヒブの接種のタイミング

ヒブのワクチン接種回数は合計4回で、このワクチンも生後2ヶ月から接種できます。こちらも4週間隔で3回接種するのが標準です。そして、1歳の誕生日を迎え、かつ、3回目の接種から7 ヶ月以上あけて、追加で4回目を接種することが推奨されています。
ただし、初回の接種の月齢や年齢によって接種間隔や回数の条件が変わってきますので、小児科医と相談しながら進めましょう。


同時接種は可能?

ワクチン
iStock.com/Davizro

肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンは接種する時期が重なっているため、同時接種が推奨されています。ほかにもB型肝炎やロタウイルスの予防接種と同時接種で進めて行くことが多いです。

肺炎球菌感染症とヒブ感染症が原因で発症する可能性がある「細菌性髄膜炎」は、初めは風邪に似た症状のため、早期の診断が難しいです。しかし、けいれんや意識障害など、髄膜炎の症状がでた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

感染すると、抗生物質が効かない菌もあるため、子どもが生後2ヶ月になったら肺炎球菌感染症とヒブ感染症の同時接種をするとよいでしょう。

肺炎球菌感染症とヒブ感染症のワクチンの副反応

予防接種をしたあとの副作用や副反応が気になるママもいますよね。実際にどのような副反応に気をつけ、副作用や副反応が見られたときの対応はどのようにしたらよいのでしょうか。


副作用と副反応

薬を飲んだときに、薬の効果以外の症状が出ることを薬の「副作用」といいます。ワクチンを接種したあとに、熱が出たり、注射をした部位が腫れたりするなどの反応が出る場合はワクチンの「副反応」といいます。


主な副反応

実際に肺炎球菌のワクチンとヒブワクチンの副反応として以下のような症状の報告がありました。


・発熱
・発疹
・患部が腫れる
・患部がかたくなる


発熱や発疹は、一時的で数日で消えることが多いため、焦らずに安静にして様子をみるようにしましょう。


こんな副反応がでたら病院へ

まれに予防接種後30分以内に、重篤な副反応(アナフィラキシー症状)が出ることがあります。


・高熱
・ひきつけ
・呼吸がしづらい
・顔や手足の腫れ
・水分が摂れない
・ぐったりしている


微熱の場合でも、水分が摂れない、排尿が少ないときや、上記の中にあるような症状がみられたときには、すぐに病院で受診するようにしましょう。

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予防接種をしたあとの過ごし方

基本的にはいつも通りの生活で大丈夫ですが、下記のようなことを意識しておくとよいでしょう。


安静にする

ベッドで横になる赤ちゃん
iStock.com/S_Kazeo

予防接種をした直後は、安静に過ごすことが大切です。絵本やパズル、ブロック遊びなどで、身体を使った遊びや外遊びは控えるようにしましょう。


病院で様子をみる

予防接種後30分程度は、アナフィラキシーショックなどの症状を起こさないか、様子をみるようにしましょう。副作用や副反応が起きないか病院で待つよう指示される場合もあります。気になる症状が出たときに病院ですぐにみてもらえるように、予防接種を受けた場所の近くにいる方がよいでしょう。


お風呂について

予防接種後にお風呂に入るのは問題ありません。しかしお風呂に入ったときに、注射を打った箇所をこすったりもんだり、ゴシゴシ洗うことはやめましょう。

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計画的な予防接種で感染症を予防しよう

注射を打つ赤ちゃん
sommart sombutwanitkul /Shutterstock.com

肺炎球菌感染症とヒブ感染症は、重症化すると細菌性髄膜炎などの合併症を引き起こす可能性があります。細菌性髄膜炎は、風邪と似ている初期症状のため早期発見が難しい病気です。

予防接種を受けておけば、肺炎球菌感染症やヒブ感染症に感染するリスクを減らせたり、万一、感染したときにも、重症化や合併症を予防できるかもしれません。

肺炎球菌ワクチンもヒブワクチンも生後2ヶ月から5歳までの間に接種するように決められた定期接種です。生後2ヶ月になったら、早めに予防接種を開始して、感染症から子どもを守りましょう。


監修:千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)

Profile

千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)

千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)

上高田ちば整形外科・小児科 副院長。 小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。

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