【取材】地域に緩やかなつながりを。超高齢化社会の実情から学んだ新しいコミュニティのかたち

【取材】地域に緩やかなつながりを。超高齢化社会の実情から学んだ新しいコミュニティのかたち

「ANYTIMES」代表を務めシェアリングエコノミー協会の理事としても活動されている角田さんに、地域コミュニティと多様化する生き方、働き方についてKIDSNA編集部がお話を伺ってきました。

最近話題となっているシェアリングサービスを展開する会社のひとつ「ANYTIMES」が展開しているのは、生活の中のちょっとした困りごと、例えば部屋の掃除や夕飯の作り置き、数時間だけ子どもの相手をしてほしいなどといったリクエストに、近所の人が自分の得意を活かして応えるスキルシェアサービス。

地域社会に「緩やかなつながり」を取り戻し、多様な働き方を通して自分らしい生き方を堂々と語れる社会の実現へと向けて、「ANYTIMES」代表の角田さんは活動を続けています。

子育て中のママにとって、地域とのつながりは子どもの見守りにもつながりやすく、無視できない問題ですよね。働き方についても社会が変化を始めている今、私たちは母として、女性としてどのような意識をもってそれらを考えていくべきなのでしょうか。

今回は、「ANYTIMES」代表を務めシェアリングエコノミー協会の理事としても活動されている角田さんに、地域コミュニティと多様化する生き方、働き方について、「ANYTIMES」立ち上げに込めた想いとともに話を伺いました。まずは前編として「地域コミュニティ」にかけた想いをご紹介します。

地域コミュニティを再建したい

街
iStock.com/Easyturn

ご近所づきあいの希薄化が進み、特に都心では「隣の住人の顔を知らない」ということも少なくありませんよね。角田さん自身も都心で一人暮らしを始めた当初、近所のコミュニティが存在しないことへの寂しさや不安を感じていたようです。


「田舎だと近所がみんな知り合いだったり、コミュニティがしっかりできているケースも多いですよね。私が育った環境も、近所を歩けばみんなが挨拶をしてくれるようなコミュニティでした。

都心で一人暮らしを始めてからはそんな温かみと疎遠になってしまって、寂しかったり、何か困ったことがあったとき頼れる人がいない不安を感じました。そうした実体験と民間企業に勤めて耳にした高齢者の方の声が、「ANYTIMES」のサービスの基盤にあります」

緩やかなつながりで助け合うコミュニティの創出

「ANYTIMES」はアプリやサイトを通じて、日常のちょっとした困りごとを近所に住む誰かの得意で解決する、スキルをシェアするマッチングサービスです。どういったニーズがあり、どのような人が利用しているのでしょうか。


「ニーズとしては家事系、なかでも掃除のリクエストは多いですね。もともと「ANYTIMES」は家事のアウトソーシングの提案から始まったこともあり、スタート当初から家事系が9割を占めていました。

今は家事以外のニーズなども出てきていますが、それでも6割は家事系が占めています。リクエストに応える人は、子育てが落ち着いた主婦の方はもちろん、男性の方も多いんですよ。副業として、本業の勤務時間の前後や、土日で働かれる社会人の方も増えてきています。」


さまざまな人が利用することで近所につながりが増えていく、そのつながりは決して強いものである必要はないと角田さんは考えています。

歩く親子
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「近所の人たちと必要なときに助け合う、現代社会にマッチする地域コミュニティは、一昔前のような強いものではなく、「緩やかなつながり」でできていくコミュニティだと考えています。必要なときに、必要な人とマッチングできる、困ったときには誰かが助けてくれると感じられることは、精神的な安定にもつながると思っています。

お子さんがいる家庭でも、そういったコミュニティは子育てをする上で安心材料のひとつになりますよね。将来的には子どもを見守る地域コミュニティまで広げていきたいです。」

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途上国の開発支援への夢が、身近な問題への気づきに

「ANYTIMES」は日本が抱える社会問題の解決に向けた取り組みですが、角田さんはもともと、途上国の開発支援に携わることを将来の夢として抱いていたようです。世界から日本へと目を向けたきっかけにはどういった想いがあったのでしょうか。


「小学校のころから、途上国の街づくりやインフラづくりに関わる仕事がしたいと思っていました。いつか国連に入り国際公務員として活動するためにも、まずは民間企業でビジネスや世の中の流れを学ぼうと思い、大学卒業後大手証券会社に就職し3年後IT企業に転職をしました。

実際に民間企業で働いて気づいたのは、自分の身近なところにもたくさんの社会問題があるということ。ずっと世界にばかり目を向けていたけど、まずは日本の社会問題を解決したい、日本の街づくりに関わる仕事をやりたいと考えるようになり、「ANYTIMES」をスタートしました」


小学校のころから世界に目を向けていた角田さんの目に、途上国の問題はどのように映っていたのでしょう。

画像

「例えば、世界の戦場では、自分と同じ世代の子どもが少年兵として戦っていたり、その日の食事にも困る生活を送っている人たちが大勢いることを知って、外の世界に住んでいるからこそできる支援があるのでは、と考えていました。

そして、感銘を受けていたのが、途上国で実際に難民の支援活動をされている日本人女性の存在です。私が小学生だったころは、周りの成人女性のほとんどは専業主婦だったのに対し、途上国や戦地で活動している日本人女性がいることを記事や本で読み、自分もいつかそういう生き方がしたいと漠然と憧れを持つようになりました。」

民間企業で目にした超高齢化社会の実情

国連を目指しビジネスを知るために、まずは大手証券会社に就職した角田さん。そこで目の当たりにした日本の課題に、大きな衝撃を受けたようです。


「証券会社では担当していたお客様に高齢者の方も多く、お話を伺う機会が多くありました。相続問題や一人住まいの老人が抱える今後の不安、誰も頼れる人がいないために感じる孤独感、日常生活の中にある困りごとを耳にして、超高齢化社会をとても間近に感じたんです。

昔だったら2世帯がいっしょに暮らし解決できていたことが、一世帯や単身世帯が増えることで解決できないことが増えた、でも地域のつながりは希薄化し頼れるご近所さんがいない、その問題を目の当たりにしたことが世界から日本へ視点を移す大きなきっかけになりました」

高齢者
iStock.com/maroke

地域コミュニティの希薄化に目を向けた角田さんは、その後の転職での経験などから働き方に対する固定観念にも疑問をもち、多様な生き方、働き方ができること、それを堂々と語れることの必要性を見出します。

後編では、「ANYTIMES」のサービスに至った経緯と、その経験から学んだ多様な生き方、働き方に対する想いをご紹介します。

【取材】多様な働き方を堂々と語れる「豊富な幸せの尺度」をもった社会とは

多様な働き方を堂々と語れる「豊富な幸せの尺度」をもった社会とは

2018.06.05

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