「おうちごっこ」理論立てて物事を話す6歳の娘が育った環境【前編】

「おうちごっこ」理論立てて物事を話す6歳の娘が育った環境【前編】

父・ヒロアキさん、母・みきさん、娘・まーちゃんの家族の生活を配信し、SNSやYouTubeでの総フォロワー数100万越えの人気を誇る「おうちごっこ」。今回は、毎回必笑の動画を企画・撮影している「おうちごっこ」のヒロアキさんとみきさんに、「おうちごっこ」のもたらすものや子育て観についてお話を伺いました。

自分たち家族は”当たり前”ではない?「面白い」という周囲の反応

ーー入浴を渋るまーちゃんに「入浴」を提案する営業職や、「睡眠」へ促す秘書、女友達など、さまざまな職業や立場、シチュエーションを設定し、世の子育て世代を元気づけている「おうちごっこ」の動画。こうした家族の「おうちごっこ」を世の中に向けて発信しようと思ったきっかけは何でしょうか。

ヒロアキさん:最初は娘との遊びの様子をプライベートなInstagramの鍵つきアカウントで流していたんですが、友人知人からすごくいい反応があって。

「自分たちの家族の姿は、他の人からみたら”当たり前”なものではない、面白いものなのかな」と感じ、TikTokに投稿してみたことがきっかけです。

ーー理想の家族だ、という憧れのコメントが本当にたくさん寄せられるなど、「おうちごっこ」の動画はとても大きな反響がありますが、当初はどのように感じられましたか。

みきさん:私たちにとっては日常の風景だったので、私たちの家族はみなさんにそういう風に受け取ってもらってるんだ、という気づきがありましたね。

ーーリアルなシチュエーションや登場人物による「おうちごっこ」はまーちゃんの成長とともに日々進化していっていますね。この遊びはどのようにしてできあがっていったのでしょうか。

ヒロアキさん:はじまりはドーナツ屋ごっこさんや病院ごっこなど、市販のおもちゃを使うようなメジャーなおままごとからだったのですが、内容にバリエーションがあったほうが自分も娘もお互い楽しいだろうな、というように思ったんですよね。

そこで自分の経験から、「会社の朝礼ごっこ」をしてみたら、娘も「お父さんの会社でやっていること」として興味を持ってくれたみたいです。そうしていろいろな遊びに派生していきました。

リアルな朝礼の流れをおうちごっこで楽しむまーちゃん

朝礼ごっこ(ouchigokko/TicTokより)

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おうちごっこは「社会の疑似体験」や「生き方」を学べる遊び

ーーまーちゃんは実際に社員の朝礼を見たり、仕事をしたりといった経験がない中で、なぜここまであらゆる職業、立場の人のなりきることができるのでしょうか。

ヒロアキさん:娘との間で、ごっこあそびのリアリティをすごく大事にしているんですよ。おうちごっこで遊ぶ中でこちらから「会社ではそういう動きはしないよ」「朝礼ではこういう風に一人ずつあいさつしていくんだよ」というように伝えながら、言葉や立ち振る舞いを二人で共有しています。

みきさん:最初にこちらがやって見せて、それを繰り返しながら、父娘でごっこ遊びを構築していくことが多いかもしれませんね。

ヒロアキさん:動画にしている部分って、全部ある意味完成形なんですよ。その前にこういう遊びを何回も何回も繰り返し、二人で作り上げながらリアリティが磨かれていった状態のものを撮影しているので、視聴されている方からは一定の完成度に感じられるのかもしれません。

遊びの中で、シチュエーションにふさわしくない言葉や言い回しなどを精査しながら、アドリブが生まれていくこともあります。

みきさん:こういう流れになったら面白いよねっていうのを父娘で出しあって、それでできていくものもありますね。

ひろあきさん:まーちゃんのアドリブに、私たちも「そこでそれ言うんだ!?」と驚くことがあって、大人側も楽しんでいます。

ーーまーちゃんがワーママになり、1日の流れをまるごと行うごっこもありましたね。まーちゃんの「1人の女性が社会の各場面で持つさまざまな顔」の表現が本当にリアルでした。夫、子どもや保育園の先生、上司、後輩女子、病院の先生と、社会生活を網羅しています。

ヒロアキさん:もともとは「お家での夫婦ごっこ」「保育園ごっこ」「会社での上司とのやりとりごっこ」というように、それぞれ別の遊びだったんですよ。それを1日に集約してみたらいい感じに撮れたんです(笑)あれは、日々のごっこ遊びの集大成みたいな感じですね。楽しかったです。

ーーこうしたおうちごっこの中で、大切にされていることはどんなことでしょうか。

ヒロアキさん:学校では教えられないことってたくさんあるじゃないですか。人間が子どもから大人になっていく過程で、自然と身についていくこと。

例えば、小学校に進級したら学校の先生とのやりとりだったり、中学校に行ったら先輩とのやりとりだったり、高校に行ってアルバイトを始めるとしたら身についていないといけない教養や社会通念だったり。

そういうのを娘に対してどういう風に教えてあげられるかなと考えたときに、自分たちがやってた「おままごと」がすごく適しているなと思ったんですよね。そうして多様なごっこ遊びをやっていく中で、娘は学んでいる気は全くない状態で、自然と敬語やお辞儀など、社会的なふるまいを身につけています。

みきさん:そうした社会的な経験に加え、言葉にできないような、人と人との微妙な空気感や雰囲気を読み取ることも、おうちごっこを通して経験しているような状態ですね。この遊びを通して、社会の疑似体験みたいなものができるように、ということも大切にしています。

まーちゃんが小さいころ、病院が怖くてなかなか行けなかったり、泣き叫ぶ時期がありました。でも、ヒロアキくんと病院ごっこをして経験することで、その次の病院は泣かずに受診できるということがあったんですよね。

それで、おうちごっこ自体が娘にとって「物事を先に経験しておける機会」みたいになっているんだ、と気づいて。そこから、おうちごっこでこういったことを伝えていけたらいいね、という感覚になったのかなと思います。

ヒロアキさん:また、遊びを通していろいろな経験をさせてあげられることで、娘が人生の中で実際にその場面に直面したときに、マイナスな気持ちではなくて前向きな気持ちでいろいろなことに取り組んでいけるんじゃないかと思って。

それならばこちらも、遊ぶことに真剣になるべきなんじゃないかなと考えています。

自分が社会人1年目のときを振り返ってみたのですが、会社では「ロープレ」という形で研修をすることがあるじゃないですか。それとおままごとの何が違うんだろう?と考えたときに、子どもがやってるか大人がやってるかの違いしかないのではと思ったんです。

だからまーちゃんとのおうちごっこは、客観的に見たらおままごとかもしれないけれど、ロープレくらいの意識で取り組んでいる、というスタンスなんですよね。まーちゃんは、すごく短い期間でいろいろなロープレを経験している(笑)。

ごっこの役として企業理念を話すことができるまーちゃん

まーちゃんがついに就職しました。笑(ouchigokko/TicTokより)

みきさん:あとは、勉強も大事ですけれど、時代がこんなにも変わっていく中で、コミュニケーション能力や、人生をどうやって生きていくかというようなことも大事じゃないですか。生きる力というか……それをまーちゃんに伝えられたらいいよね、という意識でやっているところも大きいかもしれないですね。

ーーそうした力を遊びで獲得してきた結果が、今のまーちゃんなのですね。

次に、言葉がけについてご質問です。まーちゃんが犬を飼いたいと言った動画で、ヒロアキさんがまず「いいよ」と言ってから、話をはじめるところが印象的でした。お子さんへの言葉がけで意識していることはあるのでしょうか。

ヒロアキさん:一回こちらが受け止めてからじゃないと聞く姿勢もとれないかなと思い、否定しないっていうのは意識しているかもしれないですね。

でもそこには本心があって……基本的に娘の言うことには全部「いいよ」って言ってあげたいんですよ。でもその「いいよ」には責任が伴うし、ある程度制約もあるじゃないですか。

「いいよ」という親の気持ちを先に伝えて、その後に続く文章でそのために必要な、具体的な現実を話し合うということは意識してます。できていないこともたくさんあるし、毎日の関わりの中でこうしたほうがいい、ああしたほうがいいっていって発見しています。

声かけへの気づきで言えば、以前叱ったことを娘が何度も繰り返しているということがあって、本人に確認したんですよ。「今何で怒ってるのか言ってみて」って。そしたら、「わかんない。怖い」と答えたんです。その時にすごく反省しました。

みきさん:こちらが叱っていても、怒られる怖さだけが残って、内容が響いていないことを知った時、「聞き方を教えてなかったな」ということに気づいたみたいなんですよ。上手に人の話を聞くというのはどういうことかを伝えないで叱ってたから話が入っていかなかったんだ、ということを発見したみたいなんです。

そういう感じで育児に関わってくれるから、私もすごく安心して見ていられるんですよね。「頭ごなしに叱っていたことが、娘に伝わっていない」ということに気づき、そのような視点で考えられるというのはすごいなと思いました。

ヒロアキさん:やめてよ~(照)でも自分も小さいころ、怒られた時に「なんでこの人、感情的に怒ってワーワー言ってんだろ」って思ってたなということを思い出して。人から言われてそれを修正できるようになるのって結構高レベルなことじゃないですか。大人になっても難しいことだし。

それをまだ生まれて6年しかたってない女の子にいろいろと求めすぎて、あれこれ言いすぎるのもなんか違うのかなって。でもまーちゃんは口が本当に達者なので、たまに言い負けることがありますけどね。

「子どもの話だから」という姿勢で聞いていると、すごく痛い目に合うほど、一本筋を通して反論してくることがあるので、たまに「あれ、俺今話してるの6歳の女の子だよね……?」ってなることがあります(笑)

仲直りも大人の対応?

大人の対応を見せる保育園児。(ouchigokko/TicTokより)

「周りのすべてが教材」まーちゃんの語彙の源

ーーまーちゃんはそのように理論立てて物事を話す力を、どう獲得していったんでしょうね。

ヒロアキさん:うちは子どもの前でスマートフォンを触らないというスタンスで、家ではもちろん、車の中でもただ音楽を聞きながら家族3人で話しているか、景色を見ているかなんですよ。だから多分、会話している回数はものすごく多いのかなって思うんですよね。

みきさん:娘の前で夫婦の話し合いをすることも結構あるんです。言い合いのような白熱した雰囲気になっても、そこからどうやって仲直りしていくかというところまで見ているので、観察していることもあると思います。

ヒロアキさん:私たちが基本的に子どもに悪影響を与えないくらいの言い合いしかしないからこそ見せられる部分でもありますかね。

みきさん:あとはお店に行った時などは、店員さんたちをとてもよく観察しています。ドラマも好きなのでその内容も影響しているのかもしれません。

ヒロアキさん:娘には「車に乗っている時とかに周りをみてみたら、おうちごっこになり得るものがたくさんあるよ。何でもおうちごっこになるんだよ。そういうのを見て、パパと一緒にやろう。題材を探してきてよ」と言ったことがあって。

だから娘も、車に乗って周囲を見る時や、お店に行った時など、まわりの人や店員さんを教材みたいな感覚で見てるように思います。

それが論理立てて話す力や語彙力だったり、しぐさだったりに反映されているんじゃないかと思う部分はあります。

ヒロアキさん:世の中をいい意味で”おうちごっこ”という遊びの対象、教材として見れているからこそ、いろいろなことを学んでいるのではないでしょうか。

私たちがびっくりするくらい周りを観察していて、「これどういう意味?」とか、看板の字を見て「あれ読めなかった」という風に、いろいろな質問もしてくるんですよ。

自分からクイズ番組のようなゲームも提案してきてくれます。よく車の中で、私がまーちゃんくらいの年齢の子にはちょっと難しいくらいのクイズを出して、後ろでみきちゃんに正解を調べてもらって……というようなゲームをしながら学んでいることも多いと思います。

ーー道路標識のクイズ動画もありましたよね。まーちゃんが自分なりに答えを導き出そうと考えています。

ヒロアキさん:車を運転していたら、まーちゃんが急に『「パパ―!自転車買ってー!」のマーク!』って言い始めたんですよ。何のことかと思ったらあの標識(自転車及び歩行者専用道路の標識)が見つかって、めっちゃ笑いました。

ーー考える力、想像力など「生きる力」を獲得できる遊び「おうちごっこ」の奥深さを知ることができました。ありがとうございました。

後編は、ヒロアキさん・みきさんのそれぞれの役割、「やさしさと思いやり」についての考え方、「おうちごっこ」を実践するヒントなどをうかがいます。

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「おうちごっこ」取材記事 後編

2022.04.27

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