お金よりも子どもに与えたい「お金の教育」。親がいますぐ実践できること

お金よりも子どもに与えたい「お金の教育」。親がいますぐ実践できること

2022度から高校の授業で「資産形成」の内容が必修化されるなど、関心が高まっている「お金教育」。今回は、『13歳からの億万長者入門──1万円を1億円にする「お金の教科書」』の翻訳者・関 美和さんをお迎えし、日本人のお金に対する考え方や、お金について子どものために親ができることは何か、お伺いしました。

「お金にお金を稼いでもらう」考え方を学ぶ

―――『13歳からの億万長者入門──1万円を1億円にする「お金の教科書」』には、どういったことが書かれているのでしょうか。

 

この本の原題は「HOW TO TURN $100 INTO $1,000,000」で、副題には「Earn! Save!Inverst!」とあり、翻訳すると「1万円を1億円にする方法」「稼いで貯金して投資しよう」といった意味になります。ただ、必ずしも「1万円を1億円にしよう」といった、具体的なテクニックが書いてあるというわけではないんですね。「真っ当にきちんとお金を稼ぐ力を身につけること」「その稼いだお金をなるべく長期にわたって貯金すること」「その一部を投資すること」。また、稼いだお金を寄付したり、社会的なことに還元したりと「お金をシェアすること」。それらの大切さが書かれた内容となっています。

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―――特に注目すべき内容は何ですか?

 

特に、注目すべきは「投資」について。マーケットが良いときも悪いときも、長期にわたって少しずつ投資を続けていくことで、「複利の力」によって「お金にお金を稼いでもらう」ことができます。もちろん、自分で働いて稼ぐお金も大切。でも、例えば1億円ほしいと思ったとき、自分で稼いだお金のほかにも長期で投資をし、「複利の力」を借りることができれば、それが積み重なってやがて1億円になっていく。長い時間をかけて株式市場あるいは、ほかのものに投資をするということの重要性が学べる本ですね。

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日本人は貯めたお金を現金で保有している

―――昨今、欧米と比較して日本人は資産を投資に回さない、という事実があると発表されています。

 

日本では、貯金を現金で保有する割合が非常に高いと言われています。いま、「日本の個人資産は1900兆円」という話もありますが、そのほとんどが現金で眠ったままになっている。例えば、銀行にお金を置いておくことも現金で保有していることになります。ずっと銀行にお金を置いておくだけでは、いままでの10年20年の金利の環境下から考えると、この先お金はほとんど増えません。むしろ少しずつ減っていくかもしれないという状況です。

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―――日本と欧米でお金の考え方に違いがあるとしたら、それは何なのでしょうか。

 

欧米では、個人資産のうちの3割4割、あるいは5割といった金額が投資に回されています。特に、株式市場にお金が回っているので、日本と欧米を比べると株式市場の伸び率というのも欧米、特にアメリカは高いです。お金を現金ではなく株式市場に投資をすることによって、自分が働いて稼ぐお金以上にお金にお金を稼いでもらう。これまでの10年20年あるいは30年を振り返ると、そういった考え方が欧米では確立されてきたのだと思います。

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親自身がリスクを取ることを恐れない

―――お金について子どもの未来のためにいま、親ができることは何でしょうか?

 

なぜ日本人は現金での保有比率が高いかというと、ほかの国に比べて、リスクを極力回避する傾向が顕著だからです。そのため、日本人はお金が減る可能性のあるものに投資したくないと思いがち。私もよく、何に投資したらよいか聞かれることがありますが、「こういうのはどう?」と答えると、「でもそれってリスクがあるよね?」と言われることがあります。

 

もちろん、金融商品にはリスクがつきものです。でも、10%のリターンが見込めるということはもちろん、10%値下がりする可能性もあるということ。0%でいいのであれば、投資をしないのが一番です。でも少しでもお金にお金を稼いでほしいと思うなら、リスクを取らなければなりません。リスクとリターンというのは同等だということを、大人が理解することが重要。そして、リスクを取ることを恐れないことを、お金に限らず親自身が実践するのも大切ですね。

 

次回は、『13歳からの億万長者入門──1万円を1億円にする「お金の教科書」』の内容から、子どものために知っておきたい「お金の力」第2弾をご紹介します。


関美和

 

翻訳家。MPower Partners Fund L.P. ゼネラル・パートナー。杏林大学外国語学部特任推教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。電通、スミス・バーニー勤務後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。また、アジア女子大学(バングラディシュ)支援財団の理事も務めている。おもな訳書に『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社)、『FACTFULLNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP)、『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『お父さんが教える13歳からの金融入門』(日本経済新聞出版)など多数。

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2022.01.11

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