論理的思考力を伸ばし、AI時代を生き抜く【七田式ダ・ヴィンチマップ】

論理的思考力を伸ばし、AI時代を生き抜く【七田式ダ・ヴィンチマップ】

KIDSNA編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の最新書籍。今回は『七田式』創設者の次男であり『しちだ・教育研究所』代表の七田厚氏が、これからのAI時代に子どもに伝えるべき、『七田式 論理的思考力がぐんぐん伸びるダ・ヴィンチマップ』(徳間書店)を一部抜粋・再構成してお届けします。

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AI時代に子どもたちが必要な能力とは

AI(Artificial Intelligence:人工知能)は基本、プログラミングされたことしかできません。なかにはディープ・ラーニング(学習機能)ができるAIもありますが、そのつど変わる人間の喜怒哀楽を瞬時に読み取るなど、感情が伴う反応行動はまだまだ苦手とされています。

しかし2016年になると、「AIが、2030年には一人の人間の頭脳を超え、2045年には全人類の知能をも超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が起こる。そのうち人類はAIに仕事を奪われ支配される」と、こんな声を多く聞くようになりました。

一方で、2011年から2019年まで研究開発された人口知能プロジェクト「東ロボ」では、AIの得意なことと、不得意なことがある程度、明白になってきました。

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私が全国各地の講演会で多くの教育者や親御さんたちと交流するとき、「AIはこれからの人間にとって、敵ですか?味方ですか?」という質問をよく受けます。私の考えは、たとえAIが人間以上に膨大なデータを覚えて瞬時に処理できたとしても、そのデータをどのように使うかは、人間の指示が必要だと思っています。

人間にとってAIとは敵ではなく、一緒に共同作業できる「友だち」のような存在になることが理想です。

多くのデータから基づき答えを導き出すスピードは、私たち人間はAIにかなわないかもしれません。しかし、想像力、過去の経験、多くの記憶していることなどから基づく直観力、ヒラメキなどはAIよりも劣るということは起こり得ないでしょう、AIが得意なことはAIに任せて、より効率的に物事が運ぶようになれば、それは非常に意味のあることです。

AIによって消える可能性がある職業、AIには代替できない職業は、下記などが挙げられます。

<AIによって消える可能性がある職業>

・銀行の融資担当者

・スポーツの審判

・不動産ブローカー

・レストランの案内係

・ネイリスト

・電話販売員

・時計修理工

<AIでは代替できない職業>

・最前線のメカニック・修理工

・メンタルヘルスと薬物利用者サポート

・作業療法士

・栄養士

・振付師

・警察、探偵

・歯科医師

・小学校教員

機械的にデータを処理するような仕事、形式的・マニュアル化できる仕事はAIにとって代わられていくのでしょう。反対に、その場その場の判断が必要で複雑なコミュニケーションが必要とされる仕事、柔軟で臨機応変な対応が求められる仕事、想像的で知的な活動が求められる仕事はAIには難しく、残る職業といえます。

AIが苦手なことを人間が極めていくことが今後生きていくうえで重要なポイントになりますが、教育現場でも次の学習に力を入れていくと予想されます。


  1. 集団と少人数グループですべきこと、個人ですべきことの分担
  2. 思考力とコミュニケーション能力を伸ばす教育と体験学習の重要性
  3. 知識の詰め込み型の学習から問題提起型学習へ
  4. 机上の学習だけでなく、社会参加型学習(サービス・ラーニング、インターンなど)の重要性
  5. 美術や音楽、体育、家庭科学習の重視
  6. 教科横断型の総合的な学習の必要性(新領域的学習)

親御さんからは、「ますます教育格差が広がるのではないか心配です」というような声をよく聞きます。AI時代には、学校教育だけに頼ることなく、世の中の情報をキャッチして取捨選択する能力が大人も子どもも必要なのではないか、と痛感しています。

情報に躍らせられるのではなく、「今の自分の子どもに何が必要なのか?」をしっかり見据えて、それを頭の中だけでシュミレーションするのではなく、形にしていく道筋をつくることが大切なのです。

『ダ・ヴィンチマップ』でみるみる論理的思考力が身につく

『ダ・ヴィンチマップ』とは、レオナルド・ダ・ヴィンチの思考法にならい、自分の考えを紙の中央から枝分かれするように、放射状に言葉やイラストを書き込んでいくテクニックです。有名な「モナリザ」の絵は、『ダ・ヴィンチマップ』の手法で描かれたという説もあります。

まずは中央にテーマとなる「モナリザ」のワードがあり、そこからテーマのパラメーター(特性や要素など)となる、「頭」「目」「鼻」「口」「あご」を書き、さらに各パラメーターから派生するバリエーションを思いつく限り書き出していくのです。

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出典:『七田式 論理的思考力がぐんぐん伸びるダ・ヴィンチマップ』(徳間書店)より

七田式教育では、右脳は「イメージ脳」、左脳は「言語脳」と考えています。思いつきや発想、連想する言葉やイメージは、右脳の働きにより頭に浮かぶものです。それがどんなものなのか、どんな言葉として表現するのが適切なのか、またそれらをどのように説明すれば伝わるのかなど、論理的に表現することは左脳の働きによるものです。

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左脳の論理的な表現を磨くことで、右脳のヒラメキが具現化されるのです。頭の中を整理してまとめるためには、「書く」「口に出して言う」ことがよいでしょう。「書く」「言う」ことで右脳と左脳がつながり、そこには創造が生まれるのです。右脳と左脳をバランスよく働かせるために、『ダ・ヴィンチマップ』によるトレーニングがおすすめです。

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『ダ・ヴィンチマップ』の優れたメリットは他にもたくさんあります。まず、『ダ・ヴィンチマップ』を行うことで、五感をフル回転させるさせる効果があります。たとえば「梅干し」とマップの中に書き込むと、梅干しの外見のイメージやその酸っぱさが瞬時に思い浮かび、口の中に唾が出てくることもあるかもしれません。

このように実際にはそこにないものであっても、言葉を書き出すことによってイメージの五感が働き、実際に目の前にあるような感覚になることをイメージの五感といいます。スポーツ選手はこのイメージ力を使って、試合で最大限のパフォーマンスを発揮している自分を思い浮かべ、最高のコンディションを整えたりします。

直感力を鍛える効果もあります。直感力とは論理的に考えて答えを導くのではなく、通常、人が見通せないようなことにふと閃いて、問題解決のヒントを見いだす力のことをいいます。これは人間独自の能力で、まだAIには苦手な分野です。

何か解決したいテーマがあったとき、ただ頭の中で「どうしよう……」と考えるよりも、『ダ・ヴィンチマップ』に書き込みながら立体的に見つめる方が、イメージが湧いて直感が閃くのです。

他にも、『ダ・ヴィンチマップ』を行うことによって、下記のようなメリットもあります。

作文がすいすい書けるようになる

記憶力がアップする

発想力を磨く

論理力を伸ばし、プレゼン力も育てる

さらに、『ダ・ヴィンチマップ』をさらに有効に活用するためには、補完する体験やインプットが必要です。読書や映画鑑賞、旅行、社会見学など、その人の知識や経験を増やすことは『ダ・ヴィンチマップ』を補完するうえでとても有効だといえます。

それは、発想の手助けとなる体験や知識の習得、あるいは物事を論理的にまとめるときの語彙力にも通じるかもしれません。マップのように俯瞰しやすくまとめることで、あるテーマとテーマの間にある共通することや違いなどを見いだす際の思考や気づきなども、横断的に養うことができるでしょう。


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『ダ・ヴィンチマップ』の実践

『ダ・ヴィンチマップ』を活用できるように、実際に書き方を説明しましょう。


  1. 中央にテーマとなる「海」というキーワードを書きます
  2. 放射線状に枝分かれするように、思い浮かんだワードを書いていきます
  3. ある程度ワードが出そろったら、今度は言葉同士を結びつけてみましょう
  4. でき上がった『ダ・ヴィンチマップ』の中で、同じワードが繰り返し出ていないか見ましょう。何度も出てくる言葉には、自分の中のこだわりや問題点が隠されているのかもしれません
  5. アイデアとして使えそうなワード群に色をつけたり、線で囲んだりしてグループ化します
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出典:『七田式 論理的思考力がぐんぐん伸びるダ・ヴィンチマップ』(徳間書店)より

『ダ・ヴィンチマップ』に初めてチャレンジするお子さんには「タコ足トレーニング」もよいでしょう。下図にあるように、1つテーマを決めたら、タコの足の8本に合わせて、関連することを8つ、タコ足の下に書いてみましょう。

できたら、今度は制限時間を決めて書いてみましょう。テーマが同じでも、違う発想ができるようになると、「発想力」「直感力」もどんどん伸びていきます。これらのトレーニングは、柔軟な発想を身につけることを目的としています。ぜひゲーム感覚で継続してやるようにしてみましょう。

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『ダ・ヴィンチマップメソッド』の活かし方

最後に、これまで紹介した『ダ・ヴィンチマップ』メソッドを、どのように活かしていけばよいかをお話ししていきます。具体的には下記のように活かしていくことで、さらに人生が豊かになるといえるでしょう。

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1つのテーマで『ダ・ヴィンチマップ』を使って連想していくと、一見、関係がないと思われることも、実は「関連づける」ことができます。関連づけるトレーニングこそ、ヒラメキやアイデアのもとです。

すべてが関連していることを知れば、発想力は無限に広がっていきます。ダ・ヴィンチが画家としても、科学者としても天才的な能力を発揮したのは、すべてのことは関連しあっていることを体験として知っていたからです。子どもたちには『ダ・ヴィンチマップ』を使ってさまざまなつながりを研究させるとよいでしょう。

たとえば、子ども自身の年表を書いてみると、自分では忘れてしまったけれど、よい思い出やすてきな出会いがあったことを思い出します。また、時代の違う、歴史上の二人の会話を想像してみるのもよいでしょう。時代が違っても何か関連すること、共通することがあるのか調べ、歴史を学ぶこともできるでしょう。

是非お子さんといっしょに、挑戦してみてはいかがでしょうか。

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七田式 論理的思考力がぐんぐん伸びるダ・ヴィンチマップ

七田 厚(著)¥1,540(税込)徳間書店

2022.01.17

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