電子マネー、キャッシュレス、「見えないお金」との付き合い方

電子マネー、キャッシュレス、「見えないお金」との付き合い方

KIDSNA編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の書籍。今回は、キッズ・マネー・スクール代表・三浦康司氏が、これからの時代に子どもに伝えるべき、お金の知恵を分かりやすく解説した『10歳までに身につけたい一生お金に困らない子どものルール』(青春出版社)を一部抜粋・再構成してお届けします

そもそもお金って、何だろう?

「お金って、なあに?」と子どもに聞かれたら、なんと答えますか?

①何かを買うのに必要なもの

②生活するのに欠かせないもの

③安心のために蓄えておきたいもの

いろいろ出てくると思います。子どもが一番イメージしやすいのは「①何かを買うのに必要なもの」でしょうね。子どもは大人がどこでどうやってお金を使うか、じつはよく観察しています。

親がお菓子やおもちゃを買ってくれるのを見ていれば、「お金があれば欲しいものが手に入る」ということは、3歳くらいの小さな子でもわかります。親が思っている以上に、子どもはお金の概念をしっかりつかんでいるんです。

でも、子どもたちが実際のお金に触れて、その存在感をしっかり体得する機会は、どれだけあるでしょうか?

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今は、お金を引き出すのもATM(「AutomatedTeller Machine」の略。「現金自動預払機」)が当たり前になりました。また、「Suica」や、「ICOCA」などの交通系I C カードを「ピッ!」とすれば、バスや電車にも簡単に乗れます。買い物の支払いもできます。

お金の送金も買い物も、スマホやネットでクリックするだけで、あっというまに終わってしまいます。少し前までは、買い物も切符も現金でしたから、この金額にはこれだけの紙幣や硬貨を払うと学習する場が、日常生活にたくさんありました。

現金よりも、カードで何でも済ませるシーンばかりを見ている現代の子どもたちは、タッチパネルの操作や「ピッ!」だけで、なんでも―高かろうが安かろうが―買えてしまうと錯覚してしまいます。

見えないお金のメリット、デメリット

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① プリペイドカード(書店で使える「図書カード」、コンビニや飲食店で使える「QUOカード」、運賃や自動販売機の支払いに使える「Suica」や「ICOCA」など)

②乗車券や回数券

③ 電子マネー(お金の情報をデータとして記録し、代金や運賃の支払いに使えるようにしたもの。携帯電話やスマートフォンに、この機能がついている場合がある)

④ 商品券(印字された金額の範囲内なら、何でも買える「ギフト券」の他、「ビール券」「お米券」など特定の商品にのみ使えるものもある)

⑤テレフォンカード

身近にあるこういった便利なものは、すべて、千円札や五千円札などの紙幣、百円玉などの硬貨と同じ価値のある「お金」。落としたら、現金を落としたのと同じことです。

でも、こうした現金以外のお金は、どことなく現実味に乏しくて、お金を使っている、所持しているという感覚が薄れてしまいがちです。

「見えないお金」のいいところ、悪いところを、子どもと一緒に話し合ってみましょう。

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「見えないお金」の価値を知る

クジットカードや図書カードに商品券、テレフォンカード、SuicaやICOCAなどなど、お金と同じ価値がある、「形を変えたお金」。

生まれたときから、こういう便利なものに触れている子どもたちは、これらに現金と同じ価値があることが実感としてなかなかわかりません。

お財布の重さや紙幣の違いなどで、お金をたくさん使ったか、あまり使っていないかが実感できませんからね。いくら入っていても、電子マネーの重さや形は外から見たらなにも変わっていませんから、親が意識して、お金の価値を教えることが必要です。

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こうして実際に並べて見ると、「わ、これだけの金額のものなんだ!」とう実感が湧いてきて、無造作に置きっぱなしにしたり、どこかに忘れてくるなんて、怖くてできなくなります。

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見えないお金の価値を実感する方法

キャッシュレス化によってお金に触れる実体験が薄れていくのは、時代の流れもあるので、致し方ないでしょう。

たとえば、Suica(関東地方)などに代表される交通系IC カード。ICOCA(関西地方)やSUGOCA(九州)、PiTaPa(関西の私鉄)、manaca(名古屋)、Kitaca(北海道)などエリアによってもいろいろ。

電車やバスにも乗れますが、カードによっては、コンビニやスーパーでも買い物できます。今後、キャッシュレスの傾向はますます加速していくでしょう。

とはいえ、電子マネーはATM同様、打出の小槌ではありません!

「魔法みたいに便利だけど、魔法みたいにいくらでもお金が出せるわけじゃない」

「お父さん、お母さんが働いたお金があるから使える」

ことを伝えましょう。

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IC カードのほうが少し割安だけれど、目的地までにどれくらいのお金がかかるか、実感させるいいチャンスです。安い勉強料だと思いましょう。

お金の始まりは物々交換

ところで、お金の始まりを知っていますか?

子ども向けの講座では、私はよく、日本昔話の「わらしべ長者」にたとえてお話ししています。要は、お金のおおもとは「物々交換」。

大昔からお金はありましたが、正確に言えば、「現在のお金の代わりをしていたもの」

があったということなんです。

たとえば、お金の代わりには、こんなものが使われていました。

①貝

②塩

③米

主に「腐らないもの」「みんながほしいもの」「価値がわかるもの」などがお金のように

使われていました。

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貝が欲しい人もいれば、米が欲しい人もいますね。それぞれ欲しいものが違います。お互いに欲しいものが一致したときに、物々交換が成立します。

何となく、お金を払って物を手に入れると、お金で何かを買っているような気になりますが、大昔のように、貝、塩、米などで物々交換しているときと、やっていることは、実は変わらないんです。

お金がかかる手続きには子ども同伴で

子どもに「電子マネー=お金」であることを実感させたいなら、実際にお金のチャージをやってもらいましょう。

少し時間に余裕があるときに、駅の自動券売機やバスの乗車口で、実際にお金を挿入して、入金金額を目で見て確認してもらいます。

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「ほら、これだけの金額が入っているんだよ」

「なくしたら大変だね、気をつけようね」

と、現金と同じ価値があることを、それとなく伝えていきましょう。

銀行で実際に子どもに通帳を作らせるのもいい経験になります。たとえ、署名の字が少し汚くても問題ありません。窓口の方は喜んで対応してくれるはずです。自分で口座を開いたということで、その金融機関がとても印象深くなり、生涯お付き合いするメイ

ンバンクになるかもしれません。

ICカードや子ども用携帯電話の手続きも、大人がササッと済ませてしまうことが多いですが、たとえ子ども用であっても、支払いは親がしているのですから、そこを理解させたいところです。その大事なステップを省くと、子どもにはお金が「見えないまま」になってしまいます。

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10歳までに身につけたい一生お金に困らない子どものルール

三浦康司著

1,518円(税込)青春出版社

2021.12.29

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